読書記録

2020年02月23日(日) バルス / 楡 周平

 界最大ネット通販会社《スロット》は、極限に達した物流システムに支えられていた。生命線の宅配便トラックがテロの標的になった時、日本中が機能不全に陥る。格差社会への不満を抱えた「バルス」と名乗る人物による犯行声明がマスコミに届き、次の犯行予告が伝えられた。宅配会社は荷物の受け付けを中止すると、それに伴いネット通販会社の出荷も停止、あらゆる産業で事業が滞りはじめた。バルスは予想外の要求を突きつけた。
それは『派遣法と労働契約法の再改正』だった。


 社会保障が何もない時給いくらの派遣社員という非正規雇用者の実態や巨大ネット通販の舞台裏。「送料無料」システムを支えるのは安い労働力。
非正規雇用が拡大すればこの国そのものの存続が危ういのに、政治家や富裕層はなにもしてくれないし、国民も足元に火がつかない限りは見て見ぬふりの、すぐに忘れてしまう。

犯人は井坂敏、スロットに派遣社員として働いていた大学中退の23歳の男。


「日々に変化というものは小さなものだ。大抵の人間は、今日の暮らしは、明日も続くと考えている。でも、それは間違いなんだ。小さな変化も積み重なれば、気がついた時には大きな変化になっている。その時に慌てても遅いんだ。富める者はますます富み、貧しいものはますます貧しくなる。そんな世の中になったら、社会は崩壊してしまうよ。」

以下、参考・・・

バルスとは、スタジオジブリ制作の長編アニメーション映画「天空の城ラピュタ」に登場する、天空に浮かぶ古代国家・ラピュタの崩壊を引き起こす呪文です。

ラピュタの言葉で「閉じよ」という意味があり、ラピュタ王家の末裔であるヒロイン・シータの一族の間で「勇気の出るおまじない」と対をなす「滅びの言葉」としてひそかに伝承されてきた。


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