読書記録

2019年08月03日(土) 菜食主義者 / ハン・ガン (韓 江)

ごく平凡な女だったはずの妻・ヨンヘが、ある夜に見た夢を境に肉食を拒否し、菜食主義者となって日に日にやせ細っていく。

最初の章は夫が語る「菜食主義者」
次章の「蒙古斑」はヨンヘの姉の夫(芸術科 ?)が語る。
最終章はヨンヘの姉が 自分の気持ちに気づいていく「木の花火」。
連作小説集。

最終章で精神科病院へ面会に行く姉の心理がものの見事に表現されている。
狂っていく妹は自分の姿でもあるということに気づく。

さほど時間が経たないうちにふと気づいたのは、彼女が切に休ませたかったのは、彼ではなく彼女自身だったかもしれないということだった。十八歳で家を出てから、誰の力も借りずにたったひとりでソウルの生活を切り開いた自分の後姿を、疲れた彼の姿に照らし合わせていただけではなかっただろうか。

彼女の夫は妻の妹に蒙古斑が残っていると聞いて、ヨンヘの身体に花をペインティングして、自分の身体にも木のツルや葉っぱを描き、そしてセックスの様子をカメラに収めたのだ。
木になりたかったヨンヘはその時だけは自分を取り戻していたのではないだろうか。

人の深層に潜んでいる狂気のようなものがうまく表現されたとても面白い小説だった。
ソウルでも日本でも、みんな生きていくことにつかれているのだろうな、きっと。。。




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