| 2015年07月12日(日) |
ふぉん・しいほるとの娘 吉村 昭 |
文庫の上下本でまるで幕末の歴史を学んでいるかのような記録物語。
1823年のシーボルトの来日から、1903年にお稲(伊篤)が亡くなるまでを、この作者ならではの丁寧な文章が続く。 特にシーボルトが何を日本に残したのか、どんなことをやろうとしていたのかが、詳細に分かる。 シーボルトはまるでスパイかのように日本の文化や地理や国情を収集して国外追放になったとは驚きだが、それに関係した日本人の処罰には心が痛む。 また、出島でのオランダ人の生活風景や暮らしぶりと日本人との関わり合いや 幕末のオランダ以外の外交交渉の行方や幕府の動き、長崎貿易の実際まで理解しやすく述べられている。 まるで幕末の大河ドラマを見ているかのごとく、幕府と諸外国との外交交渉や貿易の動き、また諸藩との政治情勢まで学べる。 もちろん、シーボルトと愛妾其扇(お滝)との葛藤、お稲の波乱に満ちた一生もしっかり書かれている。 まさにお滝とお稲の幕末の二人の女性史として充分に読み応えがあった。 ただ 申し訳ないけれど、ペリー来航の様子や高野長英のことは省いてもよかったのではないかと思う。
それにしてもお稲がシーボルトの弟子である井上宗謙に犯されて、おタカを一人で産むシーンでは思わず涙が出た。 日本で初めての女性の産科医を目指して修行するお稲にとって何という皮肉な運命なのだろうと。
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