コミュニケーション。
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| 2008年04月12日(土) |
#5 あなたの結論。 |
「お前が大丈夫って言ったんだぞ…」
わかってる。 あの日は確かにあたしがねだった。 着けないで挿れてよ、約束って言ったじゃない。 大丈夫だから。 そう言った。
「うん。ごめんなさい。
だから、諦めることも考えてる」
「産みたいって気持ちはあるけど、
優ちゃんの生活も壊したくない。
今のあたしには、
優ちゃんが一番大事だから、
絶対に産みたいなんて、思ってない」
あたしの悪いところは、 こういうセリフをもっと自然と言えればいいのに、 頭で考えているときはもっとドラマチックなのに、 いざ言うとなると、 事務仕事みたいに淡々としてしまうことだ。 まったく色気のない。
きっと、だから優ちゃんは、 あたしのそのセリフを、すぐに否定したのだ。
「いや。堕ろすのは、絶対、ダメだ」
あたしが産みたいのだろうと思ったのだ。 気持ちを抑えているのだろうと思ったのだ。
「無理しなくっていいよ、
結婚は嫌だって、知ってるもの。
妊娠したのはあたしのせいなんやし、
ねぇ、無理しないで」
「無理なんかしてない。
お前だけのせいじゃない、俺だって悪かった。
諦めるなんて、絶対ダメだ」
じゃぁどうするというのか。 その先があなたに言えるのか。 あたしはそんな気持ちにさえなった。 40になるまで結婚を選ばずにきたはずなのに。
愛した女は数多くいるくせに、 それでも1人を選んできたくせに。
あたしは黙り込んでしまった。 そんな優ちゃんを好きなのだ。 わかっていて一緒にいた。 だから、結婚してなんて言いたくなかった。
優ちゃんより好きになる人なんかもういないとか思う。 一生一緒にいたいと思う。 でもその手段を結婚に頼る、 そのへんの女にはなりたくなかった。
「運命なんだ」
そういえば昔に、 何百回と避妊せずにシたけど、失敗しなかった、 とか言ってたっけ…。
「結婚するよ」
「いいの」
「いいよ」
「大丈夫?」
「大丈夫だよ」
あぁ、やっぱりこうなった。 あたしが最高と認めるこの人が、 そう言わないわけない。 わかってた。 優ちゃんという人は、 あたしの予想を決して、決して裏切らない。
「披露宴なんかしないぞ、
この年まで結婚しなかったとか悪口言われるんだから」
「そんなお金かかる事、興味ないよ。
いいよ、何にもしなくて」
ロマンティックなことは期待してない。 なんせきっかけがきっかけだから。 なんて展開の早い話だろう。
あたしはあっというまに、 優ちゃんの婚約者になってしまった。 実感もないし、 嬉しいなんて、やっぱり思えない…。
優ちゃんが結婚を言い出してくれたこと、 それ自体はモチロン嬉しいし、 ありがたいなぁと思ったけれど、
持ち前の自信のなさが災いする。 まだ全然キレイじゃないのになぁ…。 それは後々もひきずるのでまた今度。
話が一応まとまった後も、 あたしは少しうつむいていた。 これからどうなるのか、ちっとも予想がつかなかったし、 優ちゃんに申し訳ない気持ちは消えなかった。
優ちゃんはそんなあたしにつと近寄り、 そっと抱きしめてくれた。
あたしを疎ましがってない、と感じられたことは、 そのときのあたしに嬉しかった。 いつもの優ちゃんの匂いが、嬉しかった。
優ちゃんが言った。
「世界一可愛い赤ん坊を生めよ」
その日のセリフで、一番嬉しかったかもしれない。
「うん」
プロポーズに認定してもいいかなぁ。
ありがとう。
でも今日も仲良しです。 世界一可愛い赤ん坊は、すくすく元気です。 写真が増えるたび、優ちゃんは嬉しがってます。 あー本当、嬉しい。 今のほうが幸せです。
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