コミュニケーション。
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2007年08月02日(木) 待ってなんか、いなかった。







あたしは、待ってた。














寺島が、「マリアが好き」と言ってくれるのを。




渾身の力で抱きしめてくれるのを。




キスを、してくれるのを。




























ずっと、待ってた。

待ちわびていた。

待ち望んでいた。




ユミちゃんと寺島がきちんと付き合い始めてからも、

別れてからも、

よりを戻してからも、

ずっと。




















手に入ったら涙が零れるのだろうと思っていた。

胸が熱くなるのだろうと思っていた。

あたしも好きよ、と心底言えるものだと思っていた。

















寺島があたしを好きなのはわかっていた。

あたしの願いが半分叶ってるのもわかっていた。


でも、


寺島はあたしを傷つけることしか知らなくて、

ユミちゃんとのペアリングをつけたまま、

あたしを求めてきたりして、

そのくせ、

あたしにしか本音を出せなくて、

あたしの新しい男に嫉妬して、

寂しくなったらあたしの元へ来て、

次の日には平気でユミちゃんを褒めて、

ユミちゃんを好きだと隠そうともしないで。



あたしは、

あたしの願いが叶えられないからじゃなく、

そんな寺島に失望した。

怒りを感じた。

憤った。

許せなかった。

自分の感情すらわからないのか、と幻滅した。






だから、歩き出して、






誠さんの力を借りて元気になって、

思いがけず社長からも見初められちゃって、

あぁ、どちらもあたしが望んでいた人、

社長に至ってはまさしく理想、

きっとあたしは誠さんをまた振り切ることになる、

でもそれでいいの?人としてどうなの?

なんて、不埒なグダグダを藤原君に披露したりして、


ふと気づいたとき、気づかなくても、

あたしの頭の中に寺島がいなくて、

それが嬉しいとすら思えなくて、

別れて1年がとっくに過ぎたのだ、と思い出して、

もう当たり前で、

ユミちゃんと別れずにいろと思うくらいで、

最低な男のキスなんか望んでいる暇もなく、

最高の男があたしを抱きしめるから、

寺島との時間を望まなくなった、

優先しなくなった、

捕らわれなくなった、

「今」

になって。































お待ちかねの、寺島の覚醒、だった。


























「客観的に考えてみたんだ。

俺は、寂しくなったらマリちゃんのとこへきて、

何でだろうってずっと不思議だったけど、

ずっと、逃げ続けて考えないようにしてたから、

向き合ってみようって思ったんだ。

ユミがいるのに、

マリちゃんとの“つながり”も欲しいんだ。

だからまだ…



マリちゃんが好きなんだと思う」




だからキスしたいよ、と言って、

あたしがずっと欲しがっていた、

浴びせるようなキスも、熱いキスも、

惜しみなく、くれた。






本音を話すのは久しぶりだから恥ずかしい、と、

ゆっくり、話していた。







好きだとはっきり自覚して、

今後、「体目当て」だと思われたくないから打ち明けたこと、

最初は自分もそうだと思っていたけど、

好きだと思ったらユミちゃんとのことが矛盾になるから逃げていたこと、

あたしを失いたくないこと、

他の男にとられたくないこと、

あたしに頼ってること、

あたしを支えにしてること、

あたしを心から可愛いと思っていること、






え と せ と ら …




















聞きながら、あたしは泣いていた。














あんなにも望んでいた人が、やっと来た。

気持ちが戻ってきた。

待っていたあたしが、泣くはずだった。



でも、もうあたしには選べない。

寺島を選ばない。

キスが実感になって降ってくる。




胸が熱くならなかった。

痛くならなかった。

それは例え話だから、と頭で考えても、

あたしが選ぶのは、別の未来。






誠さんを振り切ったように、

この人を、あたしが振り切らなきゃいけない。

昔、確かに愛していて、

髪を振り乱して泣き叫んで求めた寺島に、

ごめんね、と言わなきゃいけない。








悲しかった。

タイミングが違っていれば、と思った。

あなたは遅すぎた。

むしろ、言わずにいてくれてたらよかったのに、と思った。

ありがとう、嬉しい、と言うのは、

あまり知らない男の子から言われたときの声と似てる気がした。






寺島があたしの手を握るのも、

頬にキスをするのも、

久しぶりに「マリア」と呼ぶのも、

何も響いてこなかった。






あたしとあなたは、

ある意味幸せな形で、

少しの誘惑と余韻を残して、終わるはずだったのに。







「完全に失いたくは、ないのに…」










あたしはそう言って、泣いた。

















**





オチをつけるとするならば、
寺島に、

ユミちゃんと別れる気はない、ってことです(爆)


だからあたしがこんなに悲しむことないんだけどね。
どっちも好きだとかふざけんな、この期に及んで、
で済む話なんだけどね。


大体、
寺島がいきなりと言ってもいいくらいこうなったのは、
あたしが社長にメロメロになって、
寺島につれなくなったからじゃないかな、と睨んでいる。

そりゃぁ、追いかけたくなるわよね。
社長のことは話してないけど、
あたしの雰囲気も変わっただろうし。


社長のことも全部話して、
あなたの気持ちは幻なのよ、
ユミちゃんと別れられないのがいい証拠でしょ、
って言ってやってもいいんだけど、
社長のことはあんまりかなぁ、と思うので、
出来るだけ誠さんのことをもっともらしく言うつもりでおります。


そういう嘘はあまり吐きたくないけど、
全部話すのは自己中ってもんかなと…。
あたしが楽になりたいだけなんだよ、
少なくとも、二股だという事実から。
寺島のことなんかちっとも考えてないんだから。


で、ちょっと話はズレるけど、
あーあ、やっぱり社長を選んでるよ…
また手のひら返しだよ…と自己嫌悪に陥ったりしている。



あたしと社長はどうも似ているみたいで、
だから好ましく映るみたいだ。
社長は、自信家に見えて、
自分をかっこいいと必要以上には思っていない。
「贅沢させてやれなくてごめんな」
って謝ってくる。
贅沢させなければ嫌われると思ってるらしい。

…まぁ、社長令嬢とか会社役員とかを相手にしてきたんだから、
そう思うのも当たり前なのかな。
大丈夫ですよ、生まれてこの方、誇りある庶民の娘ですから。




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初めてだったわけですよ、
用事もないのに喋る電話なんて。


…浮気は嫌い、マリがしたら終わり、って言ってたから、
嗅覚が働いたのかもね…。
あー、怖い。




雪絵 |MAILHOMEBLOG

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