コミュニケーション。
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| 2007年08月04日(土) |
だから今は、手を振るの。 |
「俺の入る余地、ないでしょ?」
寺島にそう言われて、 自分が社長に恋していることに気がついた。
「ないね」
と答えられることもそうだけど、 あたしの言動や表情から、 そのことが寺島にわかってしまってたなんて。
「俺の予想ではさ。
俺とカメラマンが、同じ位置で抜きつ抜かれつなんだ。
その男が、ずばぬけて先を走ってる」
ここまで言われちゃ、降参だった。
本当は、寺島を思うのなら、 絶対に降参してはいけなかった。 シラを切り通さなければいけなかった。
降参したあたしに、寺島は呆れていた。 そう、昔のあたしのように。
ユミちゃんのことで悩む寺島に、 電話口でわざとらしくため息をついて、 笑ってあげながら涙を流していた、あたしのように。
嘘を吐くのに疲れてしまった。 社長のことを隠すのは、 月野さんや誠さんのことを隠すよりきつかった。 大体が、隠しても隠しても、 溢れ出てしまってたってことなんだ。 そのことを知ったとき、もう無理だ、と思った。
恋してることは、隠せない。 高校生のとき、ちょっとでも落ち込んだ顔をしていたら、 「寺島のことでしょ?」 とすぐ言われたように。
ごめんなさい。 本当に自己中で、ごめんなさい。 だって、 あなたがあたしにしたことと、同じだもの。
でも、恋してることは、謝れないから。 謝らなかった。
「だから俺は、マリちゃん争奪戦から抜けるよ」
「まぁ抜けるも何も、参加資格さえないけどね。
ユミちゃんとは別れないんでしょ?」
寺島は笑わなかったけど、うん、と言った。
「ねぇ、こないだ、
あたしのことを好きだって言ってくれたのは、
本当に嬉しかった。
だってあたしは待ってたから。
でも、今日、
陽ちゃんがあたしのセリフや行動をきちんと見ていてくれて、
そこからあたしを読んでくれた、
あたしの気持ちを汲んでくれた、
そのことがわかったことのほうが嬉しいよ。
陽ちゃんは、
あたしの言ってることなんか聞いてない、って思ってたから」
縁を切るつもりだった、らしい。 社長との関係は、ほぼ確信していたらしいから。
(幸子ちゃんの言ったとおり、 カレーパーティーの嘘は効いてなかったことになるな)
「答え合わせ」 の電話をかけてみたんだ、と言った。 それで上記の会話。
隠し切れなかったあたしを、 弱いね、とあなたは呆れたけど、 あなたもどっこいだと思うよ。
結局縁は切らないんだって。 藤原君は、 「まだまだ諦めたくなくて、 ずるい位置についたんじゃない?」 と言った。 あたしもそう思う。
でもあたしは、 寺島とは、 藤原君とは違った、友達になりたいから、
藤原君に言うみたいに社長の話をするし、 他愛ない話もするよ。
ヌルいし、欲張りだと思うけど、 やってみるしかないと思ってる。
本当にねぇ、わかっちゃうんだねぇ…。 やっぱり、社長の話ばっかりしてたらしいよ(苦笑) 自分はそうなる、とわかってても、 気がついてなかったよ、本当に(笑)
昔の自分の文章を読み返して… ちらちらと出てくる、 「こういう男がいい」 という発言に、 社長が全部当てはまってるのが怖い……
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