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2006年07月27日(木) ギャップに惹かれる

例の雑誌(前回参照)を熱心に立ち読みしていたときのこと。隣の男性が雑誌を手にとったまま、いつまでも開かないのに気がついた。
「買おうか買うまいか悩んでいるのかな」
と思い、なにげなく彼がさきほどから見つめている表紙に目をやって……ギョッ。そこにはいまにも胸がこぼれ落ちそうな格好をしたほしのあきさんが。

コンビニの男性向け雑誌の棚ではない。そろそろパソコン買い替えようかな?なんて思いながら書店のパソコン関連のコーナーにやってきたらこんなグラビアが目に飛び込んできたものだから、虚を衝かれ周囲の視線を忘れて見入ってしまったのだろうか。
あまりにわかりやすい反応に心の中でふきだしてしまった。

が、すぐに思い直した。こんな童顔の女の子がこんなおっぱいをしていたら、そりゃあびっくりしてしげしげと眺めてしまうはずだ(私も眺めた)。
モーニング娘。が隆盛だった頃、加護亜依さんの胸がけっこう大きいと男性ファンのあいだで騒がれていたけれど、あれも加護チャンだったからだろう。
「子どもみたいな顔をしているのに」
「まだ中学生なのに」
という前置きがつくからこそそれは喜ばれ、ありがたがられたのだ。つまり、「意外性」がその価値を高めるのである。
だから、たとえ私が「あのくらい私だってあるわ!」と言ったところで、誰もはしゃいではくれないのだ。


ギャップが好き、という人は少なくない。
誰かと親しくなったとき、持っていたイメージと中身が一致していたら安心できる。しかし、「えっ、こんな人だったんだ?」という部分を見つけてどきっとしたり、相手に興味を持つようになったりというのもよくある話だ。
私も一度、それで人を好きになったことがある。

「こういうタイプ、私はパス!」というのが初めて会ったときの印象。ゼミの顔合わせの場で、彼の自己紹介がとても軽薄だったからだ。
ノリのいい誰かの提案で「恋人持ちは正直に申告すること」というルールになった。で、彼も入学当初から付き合っているという彼女について触れたのであるが、そのあと女子に向かって「でも募集は随時してるんでヨロシク」というようなことを言ったのだ。
みなはヒッドーイ!なんて言いながら笑っていたが、私はそういう冗談がキライ。よって彼の第一印象はかなり悪いものになった。

が、同じクラスから来た人たちに推薦され、その場で彼が委員長に。「なんでこんなチャラ男が……」と思ったけれど、女子の取りまとめ的な仕事を頼まれるうちに「案外まじめなところもあるんじゃない」になり、「悪い奴ではないのね」になった。打ち合わせのために電話で話したり教室の外で会ったりするようになると、「友達としてはいい」というところまで見直した。
しかし、なまじ見た目がよかったために「遊んでいる」というイメージだけは覆らず、知り合って一年経った時点でも「三年も付き合ってるなんて彼女は相当忍耐強い人なんだなあ」と信じて疑わなかった。

が、あるとき、雑談の中で私が当時付き合っていた人とうまくいかないとぽろっとこぼしたら、とてもまともで温かいアドバイスが返ってきた。……あれ?「さっさと別れて、新しい男探せよ」で片づけられると思ったのに。
「もしかしてこの人、口で言うほど彼女をぞんざいに扱ってるわけじゃないのかな」
それから気をつけて見ていると、男同士でこれから誰それの部屋で麻雀しようぜという話になっているときに「たぶん飯つくってくれてると思うから」とあっさり帰って行ったり、夏休みの予定を訊いたら「あいつをどっか連れてってやんないと」と言ってみたりと意外と優しい。
外見やポーズからイメージするほど不誠実な人じゃないみたい……。
そう思いはじめた頃に起こったある出来事がきっかけで私たちは付き合うようになったのだけれど、そうしたらすぐにわかった。前の彼女は辛抱強かったわけでもなんでもなかったのだ。

こんなふうに「第一印象は決してよくなかったのに、不思議なものだね」と思い返す記憶は誰の中にもあるのではないだろうか。

* * * * *

最後にちょっとだけ冒頭の話に戻ると、ギャップによって性的な刺激を受けるのは男性だけではない。
たとえば私の場合。多くの男性はエッチな冗談を言ったり、女性の薄着をおおっぴらに喜んだり、「だって男だもん」を隠さない。そういう居直りが男の人って可愛いなあと思うところでは、ある。
しかし私は、ふだんそういうものをまるで感じさせない人の中に「男」を見つけると、ものすごくどきどきする。想像がつかないだけに、こういう人に求められたらたまらないだろうなと思うのだ。

「淡白そうな人なのに……」
これが男性にとっての「童顔なのに巨乳」と同じように女性のあいだで共有できる感覚なのかどうかはわからないけれど、間違いなく私は痺れる。