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2006年07月26日(水) オヤジたちの艶夜

「な、なんじゃこりゃあ……」
電車の中で、車内吊りのポスターに目が点になった。

真夏の夜遊び丸秘テク!ヨコシマオヤジのモテる艶夜
ちょい不良オヤジは“スケテロ”シャツで乳リッチ
オヤジの格上げ日焼け、貫禄オーラは“美焼け”から


これらのコピーの下にはジローラモがキザなポーズをとっている写真。
そう、『LEON』九月号の広告である。
噂には聞いていたが、たしかにこの言語センスはすごい。さすが『NIKITA』の兄貴分雑誌だけある。

私は男性誌にはまったく詳しくなく、このLEONも手に取ったことがない。オヤジたちの艶夜(アデーヤ)とはいったいどんな世界なのか。怖いもの見たさで駅の書店で立ち読みを決行したところ……。
想像をはるかに超える濃さ、脂っこさ、暑苦しさ(ためしに目次をご覧あれ)。ページを繰るごとに立ちのぼるジローラモ臭に目眩がしそうになった。

腕がだるくなるほど重量感のある雑誌の中身はニキータ(LEONには「女性」という単語は出てこない)にモテるためになにをするか、なにを着るか、なにを持つかということのみ。若い男性を「小僧」と呼んでライバル視、彼らが持たない経験値と経済力でニキータを口説き落とすテクニックをひたすら説いているのである。
「ドライブ中のBGM。小僧みたいに最新の流行曲ばかりではオヤジのセンスが疑われます」
「オヤジの合コンは寿司屋にて。小僧の合コンとは違いまっせと余裕をアピール」
エエ年して若いモンと張り合わんでも……。とにかく突っ込みどころが満載なのだ。

誌面には、これは冗談なんだろうか?と真剣に悩んでしまう珍妙な造語や迷コピーのオンパレード。
「ちょいロク(ロクデナシ)オヤジ」「夜攻勢オヤジ」(夜行性とかけたらしい)「コンガリーノ」(コンガリ日焼けした男)「ちょいムチバディ」など、NIKITAの「艶女(アデージョ)」「艶男(アデオス)」「艶尻(色っぽいお尻)」「派手女(ハデージョ)」も真っ青!なアホっぽさである。
私が「ちちりっち」と読んだ「乳(ニュー)リッチ」は上質の白シャツで素肌ちょい透け、乳首チラ見せでセクシー&リッチなオヤジを演出しようという意味であるが、
「ショルダーバッグの斜めがけで乳首を強調、これでニキータの視線を両乳首に釘付け!」
には引っくり返った。たまに職場で素肌にワイシャツを着ている人を見かけるが、「げっ、変なもん見ちゃった」でしかないぞ。
それとも、LEONを愛読するような洒落度(シャレードと読みます、念のため)の高い男性がすると「ニキータが思わず飛び込みたくなるセクシー胸元」になるんだろうか……。

* * * * *

この雑誌がイメージする「モテオヤ」とはイタリア人のオヤジたちらしく、あちらではこれが常識、こんなものが流行っているといった情報からシャツの袖のまくり方までミラノ風(ミラノまくり)を伝授する。
しかし、それらの“モテワザ”を使いこなせる日本の男性、それで落ちる日本の女性がいったいどれだけいるんだろうか。私の素朴、かつ巨大な疑問である。
現に誌面を飾っているのはフェロモンむんむんの外国人ばかりで一人の日本人モデルも登場しない。日本人が読む雑誌なのに、これいかに。
ヒゲもグラサンも似合わない、ずんぐりむっくりの日本のオヤジがやっても絵にならないということじゃあないのか。
「今宵はどのニキータをサプライズさせちゃいましょうかね?」
うへえーー。私もニキータのはしくれだが、四十、五十にもなって女にモテることしか頭にない男なんて気持ちが悪いだけである。もしカレッジリングを小指にはめた透けチクのコンガリーノに口説かれたら、うっとりするどころか席を立つ。
シガーリング(葉巻に巻かれているラベル。モテオヤになりたければ紙巻タバコなんか吸ってちゃダメ、だそう)に携帯番号を仕込んでおいて知り合ったニキータの指にはめろとか、乳間ネックレスを揺らしてニキータの好奇心を刺激しろとか、フル金時計は目立つ右手にはめて腕元リッチをアピールせよ、なんてオヤジギャグとしか思えない。

なんて言ったら、LEON編集部の男性たちに「君にはわからないだろうね」とせせら笑われてしまうのかしら。ふん、私はどうせジミータ(地味女)よ。
でももし今日の日記を読んで、
「ところでジローラモって誰?」
「艶女、艶男ってそう読むんだ〜」
とつぶやいた方がいたら。あなたもダメージョ(駄目女)、ダメオス(駄目男)よ。