過去ログ一覧前回次回


2006年04月19日(水) 「立ち会い出産」のイメージと現実(後編)

前編中編からどうぞ。

「立ち会い出産って無条件で感動的なものになるってイメージを持っていたけど、そうでもないのねえ」

……なーんてあっさり認識を改める私ではない。妹と同僚、ふたりの話はちょっと横に置いておいて、ネットで体験談を検索する。
そうしたら、「gooべビー」の中に「夫たちにとっての立ち会い出産」といううってつけのページを発見。そこに子どものいる男女三百人を対象に実施したアンケートの結果が載っていた。
「あなたは立ち会い出産を希望しましたか」にイエスと答えたのは女性が54%、男性が26%とある。ほおお、妻は二人に一人が立ち会いを希望するのに対し、夫は四人に一人か。

「未知の世界って感じ。このまま知らずにすませたい」
「妻がすごい顔して苦しんでるのなんか見たくない」
「一応立ち会う約束はしたけど、どうしても抜けられない仕事をしている間に生まれてくれないかなあというのが正直な気持ち」

思いきり腰が引けている夫たちの姿が目に浮かぶ。やっぱり怖いみたいだ。
そしてさらに読み進めると、必ずしも「立ち会い出産=夫婦で感動を共有、夫婦の絆アップ」となるわけでないことがわかるようなコメントもちらほら。

「オレがいなくても子どもは無事生まれたんじゃないかと思う」
「妻の母親と一緒に立ち会ったら、僕の出番はほとんどなし。これなら家で待っててもよかったかも」
「オロオロするばかりで夫はジャマでした。次は一人で産みます」
「苦しむ私の隣で爆睡していた。信じられない」
「『気持ち悪かった』と言われてすごく傷つきました」

ふうむ。立ち会い出産に向く夫……いや、向く夫婦、そうでない夫婦というのがきっとあるのね。

* * * * *

しかし、そんなドライな感想を聞かされても「夫が立ち会っての出産って理想的」という私の印象が損なわれることはなかった。
ある産婦人科医院の立ち会い出産体験記の中に、父親と一緒に立ち会った中学一年生の男の子の感想文が載っていたのであるが、中にこんな一文があった。

「こんなしんどい思いをして産んでくれたことに本当に本当に感謝しています。たまにオバハンとかブタとか言いますが、この出産に立ち会って、もうそんなことは言えなくなりました」

そう、これこそが私の思う立ち会い出産の最大のメリットなのだ。
それを夫婦の共同作業にすることも大変に意義のあることだが、それ以上に私が期待するのは、女性がどれほどの苦痛を乗り越えて子どもを産むかを知ることによって夫の内面に変化と成長がもたらされること。
立ち会おうが立ち会わまいが、生まれてきた子どもに対する愛情に差は出ないだろう。しかし妻へのいたわり、感謝といったものはそれを目の当たりにすることでさらに強まるのではないか。
私の夫が糊のきいたワイシャツやふかふかの布団、温かいごはんにありがたみを感じることが少ないのは自分が家事をしたことがないため、それらにどれだけの手間暇がかかっているのかを知らないからだと思う。しかし、育児についてもこれと同じ調子で妻まかせで当たり前、というふうになったら大変だ。
あまり妻煩悩でない、うちの夫のようなタイプの男性にはとくに「立ち会い」の効果が期待できるのではないかしら……。

参考までに訊いてみる。
「ねえねえ、将来うちに子どもができて、私が立ち会ってほしいって言ったらどうする?」
妻の無邪気な問いに彼はしばらくフリーズした後、
「小町さんがそうしたいって言うんならそうするとは思うけど……」
とぼそぼそと言った。
顔に「弱ったなあ」と書いてある。あまりに予想通りの反応だったので、ふきだしてしまった。


とまあ、これから出産を迎える女性や、妻に立ち会いを迫られて怖じ気づいている男性が読んだらどきりとするような話をあれこれ書いたけれど、どうぞご安心を。
さきほど紹介したサイトの中のアンケート、立ち会い出産を希望する男性はたしかに四人に一人だったが、「実際に経験してどうだったか」の質問には89%の男性が「よかった」と答えている。案ずるより(分娩室に)入るが易し、なところはあるみたいだ。
そして、「その後の夫婦関係にプラスになったか」にも彼らの48%がイエスと答えている。

夫婦でよーく相談して、自分たちに一番いいと思われる形を見つけてね。