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2006年01月24日(火) 女ふたりの温泉旅行(前編)

週末、友人と三重県の紀伊長島に行ってきた。世界遺産の熊野古道歩きと温泉が目的だ。
今回と次回は旅のシーンのいくつかを切り取ってお届けします。

■道の駅
近鉄松阪駅から送迎車でホテルに向かう途中、道の駅を発見。
横を通り過ぎながら、「道の駅って寄ったことなくて、どういうところか知らんのよ」と友人に言ったところ、運転手さんがじゃあと車を停めてくれた。
なるほど、ドライブインのようなものなのね。「奥伊勢おおだい」には野菜や果物など地元の特産品がたくさん売ってあったのだけれど、その安さにびっくり。寒波の影響で野菜の値段が高騰し、スーパーでも野菜コーナーは素通りしなくてはならないくらいなのに、そこに並んでいる水菜は一束九十円、レタスは一玉百円、きのこは一盛り五百円なのである。
興奮した私は友人にまくしたてる。
「いまレタスもキャベツも一玉四百円すんねんで、それが百円やで、百円!」

が、ひとり暮らしで自炊をしない友人はちっとも感動しない。それどころか、私が腕に抱えているあれやこれやを一瞥して、「安いのはわかったけどさ、旅行の行きがけにそんなもん買ってどうするつもり?」。
水菜とレタスは泣く泣く棚に戻したけれど、イチゴと地玉子はどうしてもあきらめられず、買ってしまった。
でも、イチゴは夕食の後部屋でデザートに食べたらとてもおいしかったし、玉子は家に帰ってからだし巻きを作ろうと殻を割ったら、黄身がいかにも元気のいい色をしていた。もちろんすごくおいしかった。

■イメージ通り
車に揺られて一時間半、ようやくホテルに到着。
携帯を見ると、「圏外」の表示。それもそのはず、「このあたりは“日本のチベット”と呼ばれていて、新聞も配達してもらえないんですよ」と出迎えてくれた女将さん。
さて、今回私たちが予約していたのは本館ではなく、離れの部屋。案内され、私はきゃーと歓声をあげた。「コテージ」だったのだ。
下駄箱のある玄関、ダイニングキッチン、こたつの置かれた広い和室。プチサイズだけれど、れっきとした一軒家である。
が、うれしかったのはそれだけではない。
「そういえばお風呂はどこだろう?」
縁側状の廊下を通って部屋の裏手に回ったら。庭にはり出したテラスのような空間が露天風呂になっていた。
「まああ、これってまさに私がイメージしていた通りの部屋じゃないの……!」

半年前、恋人と温泉旅行をしたことがない私が「彼とこんな部屋に泊まってみたい、あんなことをしてみたい」と妄想して書いたテキストを覚えておいでだろうか。
「部屋は一戸建ての家タイプの離れで、和室にはこたつがあって、山を眺めながら二人で入れる露天風呂がついていて……ウフ」
というようなことを書いたのであるが、その通りの造りだったのである(二〇〇五年八月三十日付「湯けむり劇場」参照)。
宿選びは旅行会社勤めの友人にまかせ、私はタッチしていなかったので、なんたる偶然と驚いた。

■独身者の特権
女ふたりの温泉旅行。お湯に浸かりながらの話題は、やっぱり“こいばな”。
といっても、こちらにはのろけられるようなことも相談したいようなこともないので、もっぱら聞き役だったのだけれど……(ちぇ)。
彼女は目下、片思い中。
「もし告白して失敗したら、同僚としての良好な関係まで壊れてしまうかもしれない。だったらいまのままのほうがいい。ああ、でも……」
といった話をえんえん聞かされたのであるが、ちょうど一年前、長野の扉温泉に行ったときにも私はまったく同じことを聞かされていた。
「よくまあ、そんな長いこと心に秘めていられるねえ」
と感心するやら、あきれるやら。
私にも片思いの経験は何度もあり、中には何年にも及んだものもある。しかし、そのほとんどは「振られちゃったけどやっぱり好きなの」とか「別れてからも忘れられない」とかいうもの。相手に気持ちを伝える前段階の片思いではなく、伝えて玉砕した後の片思いである。堪え性のない私は好きな人を前にそう長く黙ってはいられないのだ。

「向こうから来てくれるの待ってたって時間の無駄やで。うちらみたいな平凡な女は自分からつかみに行かんとチャンスなんか一生めぐってこんよ」
「それはわかってるんやけど……」

この会話も去年したっけ。
恋愛は独身者の特権なんだから、しっかりがんばんなさいよ。で、来年はちょっとは進歩した話を聞かせてちょうだい。 (つづく