| 2005年10月24日(月) |
文章のトレース(前編) |
遅ればせながら、「漫画『エデンの花』に『スラムダンク』からの盗用発覚」のニュースの詳細を知った。
新聞記事の見出しを読んだだけだったので、てっきりストーリーを真似たという話なのだろうと思っていたら、ワイドショー番組によると構図の盗用だったらしい。
ふと思い出したのは、林真理子さんのエッセイで読んだエピソード。パーティー会場で、『課長島耕作』の弘兼憲史さんがカメラであたりをパチパチ撮っている。雑誌に出た写真やイラストには版権というものがあるため、漫画を描く際にちょっと参考に、なんてことは許されない。だから漫画家の方々は自分の描きたいものは必ず自分で写真を撮るのだそうだ------というものだ。
「この作者がしているのは模倣を超えて、トレースですからねえ」
とあきれ顔のコメンテーター。
トレースとは、「原図を薄紙などに透かして敷き写すこと」である。盗用したほうとされたほうの絵を対比させてあったのだが、誰が見ても「これは言い逃れのしようがないね」と思うであろう酷似ぶりだった。
“文章のトレース”を見たことがある。
Aというサイトに初めてアクセスし、最新日記を読んだとき、「あれっ?」と思った。なぜなら、同じ話を以前ほかのサイトで読んだことがあったから。
そういえば、サイトのデザインもそこととてもよく似ている。でも、まさか……偶然よね?
しかし、過去ログを読み進めるにつれ、頭がパニックになってきた。覚えのある文章が次々と出てくるのである。
私が過去ログを読破した数少ないサイトのひとつにBというのがある。そこでむかしたしかに読んだ文章と目の前の文章が、そっくりだったのだ。
が、万が一にも私の記憶違いや思い込みであってはならない。とんでもない濡れ衣を着せることになる。私はAとBを左右に並べ、膨大な時間をかけてひとつひとつ照らし合わせていった。
「なんなのよ、これ……」
似ているとか影響を受けているとか、そんな生半可なものではない。Bの作者の年齢や立場を自分のそれに置き換えただけではないか。それに伴い、細部が多少変わっているが、コピーと言えるレベルであると私は思った。
一話、二話なら偶然の一致ということもあるかもしれないが、一年もの間、“トレース”しつづけていては、この作者も「オリジナルを知らない」とはさすがに言えまい。
……と思ったが、日記とは別のコンテンツの、メモ書きのようなページを読んで絶句した。
読者から「誰かに口調が似ている気がするけど、思い出せない」と言われた、誰のことでしょう、こっそり教えてくださいとか、日記とこの欄のイメージが違うともよく言われるが、どう違うのだろう、文体は同じような気がするんだけどなぁ?なんて書いてある。まったく悪びれがない。
日記の読み書きをしているといろいろなことに出くわすが、私はこのときほど怒り、そして不気味さを感じたことはない。 (つづく)