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2005年01月31日(月) 混浴に期待するもの<女性篇>(前編)

週末、友人と長野県のとある温泉に出掛けた。松本駅からバスに揺られること数十分、携帯電話もつながらない秘境の旅館に一泊してきた。

部屋に案内され、わあっ!と思わず声を上げる私たち。
い草の香りがする十畳の和室、その奥には暖炉のある広々とした洋室が。しかも正面の壁全体が窓になっており、白樺林の雪景色が眼前に広がっていたのである。これはプライベートビーチならぬ、プライベートフォレストである。
旅はふつう、温泉に浸かってのんびりしようとかおいしいものを食べようといった目的に合わせて行き先を選ぶものだが、今回は友人の「どうしても泊まってみたい旅館があるねん」が元になった、宿ありきのものである。が、さすが旅行会社で企画の仕事をしている彼女が目をつけただけのことはある、とうなる。

仲居さんがいれてくれたお茶を飲みながら、施設についての説明を聞く。
「露天風呂は玄関を出て左手にございます。すぐ隣りに川が流れておりますから、せせらぎが聞こえてそれはもう気持ちがいいですよ。深夜までやっておりますので、何度でもお入りくださいませ」
と、ここまではよかった。が、このあとつづいた言葉に私は目が・・・いや、耳が点になった。

「男女別の脱衣所はございませんので、着脱しやすいお召しもので行かれることをお勧めいたします」
「脱衣所が、ない?」
「混浴でございますので」

こ、こ、こ・・・混浴!?そんなの初耳だわよ!
あわてて確認する。

「あ、あの、もちろんタオルは巻いて入っていいんですよね?」
「申し訳ございません、タオルを湯船につけることはご遠慮いただいております」
「じゃあ、じゃあ、お湯は白いんですねっっ!?」
「いえ、無色透明でございます」

うそーー!!チェックインが重なった若い男性グループや廊下ですれ違った浴衣姿のおじさんたちが頭によぎる。
「あの人たちとハダカの付き合い・・・。ひえええー」
パニックに陥る私。
しかし、である。駅に行くバスは一日二本しかないし、街に出たところで松本城の見学とそばを食べることくらいしかすることがないのだ。温泉に入らずに帰ったのではこんな山奥までなにをしに来たのかわからないではないか。

やがて、私は心の中に夫を呼び出した。
「ああっ、こんな形で封印を解くことになってしまった妻をどうか許してちょうだい・・・!」


と、そのとき。私の神妙な面持ちを見た友人が私を肘でつついた。
「あんた、なに考えとん。女性専用の時間もあるに決まってるやん」
「へ?」
「さようでございます。十九時からの二時間は女性のお客さまだけにご入浴いただけることになっております。それに館内には他にも三つ、お風呂がございますので」

あら、まっ、そうだったの。なあーんだ。・・・じゃなくて、ほっ。
落ち着きを取り戻したら、私の中にある疑問が浮かんできた。実は以前から、私は温泉で嬉々として混浴風呂に向かう女性、とくに若い女性を見かけるたび、その心理を図りかねると同時に彼女たちに非常に興味を持っていたのである。
仲居さんに尋ねてみる。

「男女別の脱衣所もない、タオルも巻けない、お湯も白くない。それでも女性は入れるものなんですか?」
「はい、若い方でもお入りになられる方もいらっしゃいます」

不特定多数の見知らぬ異性に体を見られるという状況ではおそらく発生するであろう、羞恥心その他の感情をどのように処理しているのか。
よし、この二日間で混浴好きの女性の心理を攻略してやろう、と決めた。 (つづく