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2003年04月01日(火) 「女性専用車両」を考える(前編)

今朝の新聞に五十代の男性が書いたこんな投書が載っていた。
「空いた車両を選んで乗り込んだら、女性専用車両だった。座りたかったので気づかぬふりをしていようかと思ったが、車内アナウンスで移動するよう促され、やむなく隣りの車両へ。すると女性が何人か座っており、すでに空席はない。専用車両は空いているのだから、女性はぜひそちらに乗ってもらいたい」という内容だ。
同じことを考えたことのある男性はきっと少なくないだろう。
そういえば最近、投書欄で電車の女性専用車両についての文章をよく目にする。つい一週間前にも、四十代の大学講師の女性が書いた文章を興味深く読んだばかりだ。ディスカッションのクラスで女性専用車両をテーマに取りあげたところ、日本人学生がこぞって絶賛したのに対し、留学生はそうではなかったという。

アメリカ人学生は「こんな制度は昔のアメリカの人種隔離政策を思い起こさせる」と不快感を示し、ヨーロッパから来た学生は「女性は痴漢から自分の身を守ることもできない弱い存在であり、男性はみな性的欲望をコントロールすることができない野獣であると決めつけているという点で、両性に対する差別である」と発言した。
またアジア人学生からは「女性を性的対象物ではなく、尊厳ある存在として理解するよう男性の意識を改革することから始めないと、専用車両に乗っていない女性には痴漢行為をしてもいいというような極論も生まれ兼ねない」という意見が出た。


これを読み、私は「外国の人はやはりこれを奇異の目で見ていたのだなあ」と考え込んでしまった。実は私も二年前、首都圏の鉄道会社が痴漢対策として女性専用車両を設置したと聞いたとき、どんよりした気分になった者のひとりである。理由はふたつある。
ひとつは、痴漢被害がそれほど深刻なのだという現実を目の当たりにしての落胆。
女性専用車両の設置というのは、鉄道会社にとって進んで取り組みたい事項ではなかったのだろうと推測する。なぜなら、圧倒的に男性の利用が多い通勤ラッシュの時間帯において女性しか乗れない車両を設けることは、他の車両にさらなる混雑を招き、快適とはほど遠い車内にすることが明らかだから。
それでも京王電鉄を皮切りに、いまや全国の鉄道会社がこれを導入しているのは、「なんとかして」の声を放置しておくことができなくなったからであろう。日本の電車というのはそれだけ治安の悪い空間であるということだ。
そしてもうひとつは、男と女を分ける以外に対処法を見いだすことができなかったことに対するやるかたない思い。
女性はそうやって隔離してもらうことでしか安心を得ることはできないのか。こんなふうに安全地帯に保護されねば、わが身を守ることもできないのか。その不甲斐なさに暗澹たる気持ちになったのだ。 (後編につづく)

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   していない(すすんで利用しようと思わない)



  よろしければ理由を。

  


  

  
  
ありがとうございました。結果はまた後日。






【あとがき】
アンケートを最後に持ってくる場合、本文に気を遣いますね。アンケートより前に主張を書いてしまうと逆の意見が集まりづらいからです。これは「土俵の女人禁制」アンケートのときに痛感しました(むちゃむちゃ偏った)。どうせやるならいろんな意見をいただきたいと思うので、できるだけこちらの考えをにじませることなくアンケートに持っていきたいのですが、うーむ、文章の流れというものを考えると、それは不可能に近い。ああ、私は「あなたの意見」が読みたいのー。