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2003年01月30日(木) 読み手のモラルとサイトバレ

ありがとうございます。おかげさまで、五万アクセス達成です。
二年と二ヶ月、決して早くはないけれど、「よくぞここまで育ってくれた」と子どもの成長ぶりに目を細めるような、そんな気持ちだ。
サイトを立ち上げてから数ヶ月間の平均アクセスは二十前後。土日などひと桁の日もあったと記憶している。当然反応もさっぱりで、一週間メールボックスを開けなくてもなんの支障もない日々だった。
それなのに、よく虚しくならずに書きつづけてこられたものだと思う。モチベーションがどうのこうのなんて考えたこともなかったな。
いまさらながら、あの氷河期を寒いとも厳しいとも感じずにひょうひょうと渡りきった自分に感心している。そして感謝と。

さて、先日私はとある日記を読み、非常に不愉快な気分になった。
ふだん私は日記書きさんに感想メールを送ることはあまりない。が、この日は思わず「激しく同意」とキーボードを叩いてしまった。
まずは『くりくり雑記』一月二十五日付けの日記の後半、「ネットで嫌がられること」をお読みいただきたい。
いったいどういうつもりなんだろう。何を考えて、こんなメールを書き送るのだろうか。
テキストから透けて見える情報を集めれば、「あのあたりにお住まいなのね」「もしやあの会社かしら」と察しがつくこともあるかもしれない。しかし、書き手が意図的に「わかる人にはわかるように」記述している場合をのぞいては気づかぬふりをしておくのが読み手のモラルではないのだろうか。
どこのどなたがサイトを訪れてくれているのか、私たちにはわからない。言い換えれば、書き手にとってはメールでやりとりがある一部の方をのぞき、読み手の大部分は「顔がない」ということ。このメールの送り主は自分が「あなたの会社、見つけちゃった」を伝えたら、相手にどんな不安を与えるかを考えなかったのだろうか。
少し前にもこんなことがあった。いつものようにある日記を訪ねたら、「閉鎖しました」の文字。びっくりしてその日記書きさんにメールを送ったところ、読者のひとりが彼女の勤務先を突き止め、そこの社員に話した(知り合いがいたらしい)ために会社にサイトの存在が知れてしまい、閉鎖を余儀なくされた……ということであった。
日記の閉鎖はめずらしいことでもなんでもないが、その理由がサイトバレだと知ると、その日記書きさんと交流があってもなくても私の胸はきゅっと痛む。
書き手が「祝!○○アクセス達成」や「キリ番報告してね」をサイト上で告知するのは、単にカウンタが何千回、何万回ぐるぐる回ったことにはしゃいでのことではない。それにかける情熱や位置付けは人それぞれだが、愛情をかけてサイトを育てている人は少なくない。彼らにとってキリのよいカウンタの数字は、わが子の成長を確認できる柱のキズのようなものなのだ。
私にとっても「万」の数字がひとつずつ増えていくのを見るのは、コツコツと積み重ねてきたものの大きさを実感するいい機会になっている。
また、長くつづけていると「○○日記の××」というサイト名とハンドルネームのワンセットは身分証明書のような役割を果たしてくれるようになる。メールで長々と自己紹介しなくても、サイトで自分という人間をおおまかには伝えられるし、定位置から文章を発信しつづけていることが相手にある種の安心感を与えてくれることもある。運がよければ立ち上げ当初から何百人という読み手がつくこともあるだろうが、この「信用のようなもの」だけは一朝一夕には築けない。
そういった、書き手が長い時間をかけて培ってきたものを容赦なくゼロに戻してしまうのが、サイトバレによる閉鎖なのだ。たとえどこかにこっそり移転しようとも、すべての善良な読み手に新サイトを案内できるわけもなく、いくつもの交流がそこで途切れる。
一瞬にして「財産」を奪われた無念は、同じ書き手として察するに余りある。

前述の日記の閉鎖は私にとっても悔しく、バラした人間には強い憤りを感じた。
読み手としては「あんたのせいで読めなくなっちゃったじゃないか!なんてことしてくれたんだ」という気持ちだし、書き手としてはその想像力のなさが恐ろしい。
会社の人間が多く登場する日記で、書いているのが誰かが社内に知れたらどういうことになるか。同じ日記書きならわからぬはずはあるまい。最悪の事態となれば、話はサイトの閉鎖どころではすまないのだよ。
私もここを実生活で関わりのある人には誰ひとり明かしていない。他人事とは思えず、つい熱くなってしまった。

【あとがき】
読み手のことをあれこれ言いましたが、書き手にも尊重すべきモラルはあります。書き手は他の人のことを多少書かせてもらうかわりに、彼らに迷惑をかけないために、自分がどこの誰かということを見ず知らずの第三者に絶対に知られないようにしなければならないということ。サイトバレし、自分が恥をかくだけならともかく、過去に書いてきた周りの人たちにまで被害が及ぶようなことにならないよう、ネタにしても大丈夫かどうかの見極めとある程度の脚色は必須です。最近の検索エンジンは恐ろしいほどのサーチ力を持っていますからね。バレたときのことを考慮して、読まれたらまじでシャレにならん、身の破滅だってことは書かないようにすることも大事です。