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2002年12月15日(日) 恥ずかしい勘違い

先日出席したサークルの同窓会で。同期の男の子や後輩たちと「恥ずかしい勘違い」というテーマで盛りあがった。
「『乗ったまま借りられます』って看板あるやろ。オレ、ドライブスルーのサラ金やと思ってた」
「江角とトヨエツの『命』って映画あったやん。原作者の柳美里をずっと『ヤナギミサト』って読んでた」(正解は「ユウミリ」)
次々と出てくる赤っ恥に笑い転げる。雑学がほとんどとはいうものの、ものをよく知っている集団であるだけになおさら可笑しい。
そういえば、と私もひとつ披露する。最近、仕事中に遭遇したこんな話である。
向かいの席の女の子が電話の相手に発したある言葉が私の耳に留まった。
「ではお客様にそのウマお伝えしておきます」
ウマ……?調べものの手を止め、私が首をひねっていると、彼女は新たな相手にダイヤルし、またその言葉を口にした。
「恐れ入りますが、奥様にそのウマお伝え願えますでしょうか」
そのウマ。初めて聞く言葉である。こうして日々文章を書いていると、未知の言葉や耳慣れない言い回しに反応してしまうところがある。彼女が受話器を置くや、私は尋ねた。
「つかぬことを聞くけど、『そのウマ』ってなに?」
すると彼女は目を丸くして言った。
「そのウマっていったらそのウマですよ。使いませんか?『その内容をお伝えください』って言うときに」
そこまで聞いて、ひょっとして……が胸をよぎる。
「もしかして『その旨』って書くやつのこと?だったら『そのムネ』って読むんやけど」
「えーー!だって、『旨い』は『ウマイ』って読むじゃないですか」
社会に出てかれこれ六年半、「そのウマ」で通してきたそうだ。

「ってわけ。思い込みって恐ろしいよねえ」
すると、後輩たちがとんでもないことを言いだした。
「小町さん、同僚の話ってことにしてるけど、実は自分の話じゃないんですか」
「ありえる、ありえる。小町さん天然だから。現役のときもけっこう迷言珍答ありましたもん」
「ちゃうわー。私がそんな勘違いするわけないでしょ」
とそのとき。同期のA君が私たちのテーブルに加わった。
手ぶらでやってきた彼は私の飲みかけのグラスにビールを注ぎ足す。もう飲まないからいいやと思っていたら、彼はグラスに口をつけようとしてふいに言った。
「おまえ、どこから飲んだ?」
それを聞いた私。とっさに「ヤダー、やめてよお。いい年して間接キスとかすんのー」と彼の背中をバンバンバン!
彼は一瞬の沈黙のあと、声を荒げて言いました。
「あほっ!そこを避けるために聞いたんじゃ!」
後輩のひとりが言いにくそうにぽつり。
「小町さん。申し訳ないけど、いまの勘違いが一番恥ずかしいと思います……」
私は素直にうなだれた。

【あとがき】
てっきり「ここから飲んじゃお!」とか言われるのかと思っちゃった。だって「どこから飲んだ?」なんて聞くのって、そういう冗談が言いたいときじゃないの?……エ、そんなことない?