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2002年12月06日(金) 子ども年賀状

「ひょっとして私って性格がいいのでは……?」
そんな大いなる勘違いをしてしまいそうになるのは、他人にとってイライラや不快の種となることが自分はまったく平気だということがわかったときである。
たとえば某日記リンク集でも話題になっていた、車の「赤ちゃんが乗っています」ステッカー。あちこちで「赤ん坊を免罪符にするな」「周囲に気遣いを要請するような表示はエゴだ」という内容のテキストを目にし、そんなふうに受け取る人もいたのかと心底驚いたものだ。
故意に事故を起こす人間などいないことくらい、貼るほうだって百も承知だ。誰も「赤ちゃんに気をとられているので危険があるかもしれません。そちらが気をつけてね」なんて甘えたことを言いたいわけではない。ただ、中にはすぐにイライラする性格のドライバーもいるから、あらかじめ「こういうわけでスピードが出せないので、お先にどうぞ。煽ったりしないでね」というメッセージを発信しているんじゃないか。
後続車は「赤ちゃんが乗ってる?だからなんなんだ」ではなく、ふつうに「じゃあ先に行かせてもらうよ」とか「車間距離を少しとっておいたほうがいいな」で済む話ではないのだろうか。
常に安全運転していれば「特別な計らいを求められた」とムッとすることもないはずで、何がそんなに癪に触るのか私はいまだにわからない。
子どもだけの写真で作った年賀状についてもそう。あれを嫌う人は驚くほど多い。
来月のいまごろは「僕は君の子どもの友達じゃない」「あなたの近況が知りたいのであって、子どもには興味ない」なんて内容の日記があちこちでアップされることだろうが、こういった声は一般人のあいだに限ったものではないらしい。
内館牧子さんや林真理子さんもそのエッセイの中で、

見たこともない子供がハガキいっぱいに写っていて、まんが風の吹き出しに「ボクは今年から春風幼稚園に通います。でもママはお寝坊だから、ボク心配なんだ」なんて書かれているときては、勘違いを通り越してほとんどシュールでさえある。

坊やがタキシードを着た写真の下に、「ハッピー・ニュー・イヤー」という文字が躍っている。こういうガキ年賀状は、夫がモテることを心配する奥さんの陰謀なんだろうか。私にはわからない。


と書いている。
しかしながら、この子ども年賀状も私にはどうということのないものだ。
家族全員で写っているもののほうがもらってうれしいのは事実だ。「ま、写真写りいいの使っちゃって」「うちのほうが男前だわ」などとつっこみながら読めるし、会ったことのない夫の友人や同僚の顔を眺めながらイメージと答え合わせをするのも楽しい。
しかし、私の中で年賀状というのは相手のためではなく、自分の近況を知らせたくて送るものという認識。だから、子どもだけで写っていようが、吹き出しに「ボク○○くん。ママが今年もよろちくって言ってまちた」とあろうが、「誰だ、君は」なんて意地の悪いことをつぶやいたりはしない。親バカ結構、だってそれが彼女のいまの姿なんだもの。幸せそうでよかったと素直に思うことができる。
自分らしいもの、伝えたいと思ったものを送ればいいじゃないか。受け取った側もつまらないことに目くじら立てず、広い心で見てあげようよ。私はそんな考えである。

しかしながら、私がうーんと考え込んでしまうのは「子どものいない家庭にその手の年賀状を送るのは無神経だ。ほしくてもできない人もいるのだから」という意見を耳にしたときだ。
もちろん子どもができないことを悩んでいる様子があれば、赤ちゃんや子どもだけの写真入り年賀状は控えたほうがいいだろう。が、実際にはその家に子どもがいない理由までわからない場合がほとんどである。送る側はそこまで気を回さなければならないものなのだろうか。
自分だったらどうかと考えてみる。もしなかなか子どもを授からなかったとして、うちにだけ別に刷った年賀状で送ろうとする友人がいたら。
それは余計な気遣いだ。そんなふうに腫れ物を触るみたいにしないでほしい。「自慢してるわけ?」なんて目で私は子どもの写真を見つめたりしない。そう言いたくなるのではないか。
独身の頃、私は明日にも結婚したかったが、友人からの結婚しましたハガキやツーショット写真入り年賀状を「うらやましい」と思いこそすれ、ひがみの目で見たことは一度もない。
結婚と子どもでは深刻さが違う?そうだろうか。これは切実さを持たぬ者の能天気な意見なのか。
でも、私は願っている。どんなときも友人の幸せを素直に喜べる心はなくしたくないと。自分はそれができない人間ではないと信じている。

【あとがき】
今年のわが家の年賀状。ふつうのイラスト入りのものを注文しました。ツマラナイ。写真入りにしようにも、ツーショット写真がなかったの。今年は海外にも3回行ったし、ないわけがないと探してみたが、本当にない。まったくこれってどういうことなのよ〜。