ことばとこたまてばこ
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2006年10月05日(木) ただそれだけのこと

ここの何もかもは錆びきり濃厚に赤茶けている
誰かが居た 誰かがここに居た あまたの人々かつてここに居た
幼子を象った人形の首けらけらお笑いになった
切れた電球がパンパンパンパパパンと拍手のようにしてまたたき また暗くなった
二度と動くことのないはずのエレベーターがグワッチャ ゲチャ リ ギリギリ ギリ 気味の悪い音きしませて動いた
上空ではにやけた面構えの黄金色の太陽がぎらぎら輝く
油絵で描かれた誰かの自画像の男が手に握るボーリングのピンをくるくるまわしてた
木彫りの地蔵が雪の結晶を舐めへずって喉をうるおしたい、と呟く
カカン カラリ と転げた地球儀のてっぺんにあった土地はインド大陸
つららの下がっているぶらんこ 錆びた音きしませて奇妙に蠢いて
雪の積もったカーブミラーはかつてここに居た人々の姿に動作を再現していた
腐食に半分崩壊しているドアを誰かがどんどん叩き 誰かが開き 誰かを招き入れ 誰かが閉めた 雪に残っている誰かの足跡

北陸のある地域の廃墟の中で誰も知らずにひっそり起こった ただそれだけのこと


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