日常のかけら
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◇ちゃんと理由はあるんだよ…◇

別に何の根拠もなく逃げ出した訳じゃねえんだよ。
大体、あのオヤジ…皇帝陛下の奴は、何かってぇと、人のことを触りやがる。
初めて逢った時は何もなかった。
そう…最初のうちは何もなかった。
が、その内、近くに来るように言われて行ったのが運付きだったんだよ。
肩に軽く触れられぐらいなら我慢できた。
譲歩して手を握るのも我慢してきた。
相手はどう言っても国の最高権力者だ。
逆らって鬱陶しいコトになっても困るから我慢してきたんだ。

それが、最近、度を超してきた。

大体、後宮に女を山程抱えてる男が何で、俺に懸想する?
普通はしねぇだろうが。
それが、手を握るなんて可愛いモンじゃねえ。
肩を抱き寄せるわ、握った俺の手に頬ずりするわ、この間なんか抱きしめようとしやがった。
思わず俺は身体をかわして事なきを得たが、あの後、暫く悪寒が止まらなかった。
人が逆らえないのを良いことに、好き勝手、セクハラするなんざ冗談じゃねぇ。

だーかーら、俺はすっぽかした。
ああ、貞操の危機なんぞご免被りたいんだよ。
それに、多分…いや、きっとそんなコトになった瞬間、俺は皇帝陛下の頭を撃ち抜いてる。
きっと、絶対、撃ち抜いてる。
そんなことに成らないための、危険回避だというのに…。

でも、まあ…笙玄に説明をしなかったのはまずかったし、悟空を巻き込んだのは、もっとまずかった。
後で、クソ河童の所へ迎えに行った時に、八戒に何を言われるか…。

返す返すもあのクソオヤジの所為だ。
ええい、腹の立つ!

(三蔵)

2007年11月15日(木)