日常のかけら
◇いい加減にしたら?◇
「なあ…なぁんで三蔵サマってば、庭掃除してるわけ?」
久しぶりに訪ねた寺院で世にも珍しい光景を目にした俺は、三蔵がいる庭の端で座っている悟空に問いかけた。
「………知らない」 「何で?」 「遊んで帰ってきたらああなってた…」 「あらら…」
どこかふてくされた感じの返事に悟空を見下ろせば、怒った風な様子が見えた。
「お前の所為?」
問えば、
「知らねえって…」
と、返事が返って、
「でも、笙玄がめちゃ怖いから…たぶん……」 「多分?」
促せば、
「三蔵が悪いことしたんだ」
と、怒った返事が返った。 と言うことは、三蔵はあの温厚な笙玄を怒らせ、尚かつ罰を言い渡されるような真似をしたということだ。 だから、世にも稀な情景が目の前で展開されていると言うわけだ。
「あの笙玄を怒らせる程の悪いコトって?」
好奇心のままに問えば、
「さあ…わかんねえよっ!」
怒鳴るような返事を返してきた。 その剣幕に悟空を見やれば、泣きそうな顔が俺を睨んでいた。
「悟空?!」
名前を呼べば、あっという間にくしゃりと顔が歪んで、俺に抱きついてきた。
「お、おい…」
くわえていた煙草の灰が悟空に落ちないように、手で持てば、腰の辺りに抱きついた悟空のくぐもった声が聞こえた。
「もう…やだ…」 「何が?」 「三蔵の機嫌も悪いし、笙玄は怖いし、俺、居場所がない」 「はいはい」
悟空の背中を宥めるように叩けば、
「今日は悟浄ん家に行くからっ!」
顔を上げてそう言うなり、駆け出して行った。 その背中を見送って、三蔵を見れば、追いかけろと紫暗が睨んでいた。 悟空にあんな顔させるなら、さっさと謝って仲直りすればいいモノを…。 八戒が知ったら怒ること請け合いだぜ。 俺は了解と頷く代わりに、肩を竦めて見せ、悟空の後を追った。
(悟浄)
2007年11月13日(火)
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