日常のかけら
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◇聲が…◇

暗い窓の外。
昨夜から降り続く雨に零れる吐息は気だるい。
朝から仕事をする気になれず、寝所の居間の床に散らばったクッションに身体を預け、窓辺に踞る。
何がと言うわけでなく、気持ちは重くて。
窓に映る紫暗は、朧に霞んで。

聲が聴こえる…

ふと、視線を上げた先に見えるのは窓ガラスを伝う雨の透明な雫と薄暗い空。

…歌…?

静かに降る雨も激しく降る雨も等しく大地を潤し、命を育み、言祝ぐ歌を歌うのだと、柔らかな聲が笑う。
その柔らかさに胸の奥が僅かに暖かくなるのは何故だろう。

いつか…出逢えたら理由を訊いてみたい。

(三 蔵)

2006年03月06日(月)