日常のかけら
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◇雪の日◇

この冬は本当に雪がこれでもかと、降る。
お陰でサルが元気のないことこの上ない。
部屋の隅にうずくまってばかりいやがる。

覇気のない姿。

雪に怯えたように、あの白さに竦んでいる。
俺が雨に嫌な記憶を呼び覚まされるのとは訳が違う。
サルは魂の底から雪に怯えている。
岩牢で過ごした数え切れない厳冬は、その厳しさとその白さでサルの存在をこの世から消してしまおうとするかのようだったらしい。
サルがよく「聲が聴こえる」という大地や自然からの聲が、雪に限って聴こえないらしい。
それも原因のひとつなのだろう。
初めて岩牢から出て見た雪に頬を紅潮させ、好奇心に染まっていた姿が遙か遠い。
時を重ねる事に囚われてゆくサルの心をどうすればこの手にとどめることができるのだろうか。

傍に居てくれと、俺を見上げる瞳が訴える。
俺が傍に居ることでお前の囚われた心が少しでもこの手に戻るのなら厭うことは出来ない。
それでサルの気持ちが落ち着くのなら、たまには、傍に居てやるか。
それでお前に笑顔が戻るなら、俺はいつだって傍にいてやるよ。

(三 蔵)

2006年01月15日(日)