「そして父になる」が、カンヌ国際映画祭で
パルムドール、グランプリ、に次ぐ主要な賞である「審査員賞」を受賞したとのこと。
(NHKのニュースでわざわざこのように説明してくれてた。「審査員賞」の響きから格下の賞と思われないためかしらん。)
うわー。やりましたねー。
この他にも、コンペティション部門から独立した賞ながら「エキュメニカル賞特別表彰」も受賞。
こちらはプロテスタントとカトリック教会の国際映画組織「INTERFILM and SIGNS」から
贈られる賞で、人間性の内面を豊かに描いた作品に与えられる、とのこと。
ましゃも、作品自体が高く評価されたことをまずなによりも喜んでおられるでしょう。
先週のラジオではこのようにおっしゃってましたし。
カンヌ映画祭での主役は「監督」なんです。
日本で試写を見たときに、映画会社のお偉いさんやプロデューサーにも言ったんだけど、
この映画の主役は是枝さんなんです、と。是枝さんという人が書き下ろしたシンフォニーで、
是枝さんが指揮棒を振る。僕は主演としてそのファーストバイオリンの役を果たしたにすぎない。
ファーストバイオリンとして、是枝さんが描きたいテーマ、内容を、
過不足なく表現できる俳優として機能するということが、僕にとって重要。
自分の芝居がどう評価されたかなんて二の次、三の次で、是枝さんの作品がどう届いたか、が、
もっとも重要。本当に良かった。
ラジオでは、公式上映会についても詳しくお話なさっていて、これも面白かったので、
ちょっとご紹介。
レッドカーペットを歩いて会場に入り、それから公式上映が始まったのだけど、
その頃までは自分もおのぼりさん気分で「あー。レッドカーペット歩いたなー。すごいなー、オレー。
全然想像してない未来って、訪れるもんなんだなー」なんてぽわっとしてたんだけど、
映画の上映が始まって5分くらいから、ものすごい緊張感が襲ってきて、なんだこれは!と。
なぜそうなったかというと、映画を観る観客の「観る力」がものすごく高いことがわかったから。
ちょっとしたことの伏線とか、表情とか目線の送り方とかに、めちゃくちゃ反応するのよ。
まるで、編集室でスタッフがプロの眼で観てるほどの、集中力と洞察力と観察力で
観てるということがすぐわかって、急に緊張し始めちゃって。
「やっべー!やっべー!やっべー! あのシーン大丈夫か?俺の芝居!」とか。
今さらもう変えられないのにさ。
「プロだあの客! プロの客だったあいつら! レベルたけぇ!」と思って。
だからこそ、あのスタンディングオベーションとか、カンヌに選ばれることとかに、
監督の喜びはあるのだ、ということを、あのお客さんたちから感じましたね。
で、エンドロールが上がってきた瞬間から、ばーっと拍手が起きて、エンドロールが続いてる間も
エンドロールが終わって自分達が立ち上がってもずっと拍手が続いていて。
この距離(1メートルほど)にいる、会ったことのない外国人のお客さんたちが、
白髪の年配カップルや、自分と同じ世代の人や、そういう人たちが涙ながらに
「ブラボー!ブラボー!」って言ってくださっているわけですよ。2階まで総立ちで。
「これは本気で感動してくださっているな」ということがわかって。
是枝さんがあとの記者会見で「届いたな、と感じた。今まで経験したことがないほどの温かい拍手に
包まれた」とおっしゃっていたけれど、その「届いた」ということの感動は大いにありましたね。
で、それがずっと続くから、だんだん是枝さんも困り始めて。
「是枝さん、これどうすればいいんでしょうか」「どうすればいいんでしょうね。とりあえず手でも
振りましょうか」「そうですね」みたいな会話が。
ヨカッタヨカッタ。
福山ファンとしては、レッドカーペットを歩いてくれただけでも嬉しいし誇らしいのに、
それほどの目利きな観客から万雷の拍手を受けたということは、さらに嬉しくて誇らしいです。
帰りの飛行機でもずっとガリレオの台詞を覚えていたと言うましゃ。
帰国して自宅にちょっと寄ったらすぐに栃木→気づいたら八王子→さらに気づいたら山梨、で
ロケをしていたというましゃは、カンヌの余韻に浸る間もなかったでしょうが、
感動ふたたびでしたね。最後の最後までステキなお祭りでした。
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