今日のおたけび または つぶやき

2012年06月21日(木)  「シレンとラギ」@青山劇場



劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎『シレンとラギ』、19日に観てきました。

昼公演だったからどうにか台風もかわせたけど、夜公演(この日は昼公演のみ)だったら諦めてたかも。

あぶなかったわー。



暗殺を生業とする一族に生まれたシレン(永作博美)と、北の王国の若武者ラギ(藤原竜也)の禁断の愛。

と言っても、このお話は禁断の愛だらけなので、このふたりは画的にも雰囲気的にも

「一途でフレッシュで美しい」禁断担当です。いやもう、おっさんふたりの禁断なんて笑える笑える。



シレンもラギもとても魅力的でしたが、驚いたのは高橋克実(南の国の王・ゴダイ)の存在感とカッコよさ。

まともじゃない教義をふりかざしながら人心を掌握してゆく教祖様でしたが、

暴力的なのに慈悲深く見え、時にかなりセクシーでもあり、

あのハゲの魅力たるや(誉めてます)、ショーン・コネリーをちょっと思い出してしまったほど。



いつぞや、何かの舞台のロビーでおみかけした時も、身長はあるしスタイルもいいし、

TVで観るよりずっとかっこいいのでは、と思ったのですが(キャップ被ってて頭は見えなかった)←よけいなご報告

舞台上のお姿には本当に惚れ惚れしました。声もすごく良いしね。

まさかカッツミーをカッコいいと思う日が来るとは!(ちょっと敗北感)



あとはもちろん、大変重要な役どころでありながらお笑いでも最高のタッグをみせた

古田新太(キョウゴク)と橋本じゅん(ダイナン)とか、

登場するたびめっちゃ癒されたヒトイヌオ(犬として生きる自由を認められた人間)の河野まさととか、

若くてイイ男(ラギ)への迫り方が容赦なくて最高に笑えるマシキこと中谷さとみとか。

お笑い方面のこういう濃さ激しさは、やはり新感線ならではの魅力でございましょう。



ストーリーは1幕最後のクライマックス感が強烈で、そのせいもあったのか、

2幕に入ってからしばし中弛みっぽく感じたほどでした。



2幕では「愛(アイ)はコロシアイ」という言葉がしつこく繰り返されます。

教団の狂気と自暴自棄の象徴でもあるような言葉ですが、

その言葉がしつこく唱えられなくてはならない理由が、物語の展開上、あるのです。



だからその必要性はわかるのだけど、オウム指名手配犯の最後のひとりが捕まったという時節柄、

そういえばかつてあの教団も「ポア(殺す)することが救うこと」などと、

あきれはてる勝手な言い草を大真面目に唱えてたんだっけなー、なんてことを思い出してしまい、

それが舞台上のキモチワルイ教団の姿と重なって、ちょっとうっとおしかったですよ。

まさか公演期間中にこんな逮捕劇が起きるなんて誰も思わなかったしね。事実は芝居より奇なり。




でも、別れ別れになっていたシレンとラギが再会してからラストまでは怒涛の展開。

これどうまとめるのー? 刺し違えるのー? それじゃありきたりー、などと考えていたのですが、

そんな素人考えはちゃんと覆してくれたのでよかったです。



ふたりが刀を交えるところはゾクゾクしました。

ふたりの血しぶきが吹き上がるようにも見える中、倒れた人々が次々に立ち上がっていく

ラストの演出もよかった。



忌まわしいと思っていた自分の血が、人を殺すことしかできないと思っていた自分の血が、

「人を生かす」ことができるのだと知ったふたりが、再び生きる道を見つけたラストは、

ありきたりな言い方になってしまうけれど、確かな希望が感じられました。



だからといってふたりの関係の複雑さが何か解決したかと言えば全くそうではないのだけれど、

もうソコは問題にしなくてもよくない? みたいな気持ちになりましたし。



シレン役の永作博美さんは舞台では初めて拝見しましたが、ほんと小さくて細くて可愛くて。

狼蘭(ローラン)族は暗殺をなりわいとする一族で、シレンも幼い頃から毒使いとして訓練され、

その役目を忠実に果たしてきたのだから、あらゆる意味で腕の立つ凄い女なわけです。

なのにラギの腕のなかにすっぽりおさまってしまうほど小柄で華奢で。

自分が長身な女だけに、ああいう小さくて可愛い大人の女はほんっと憧れるわー。



狼蘭族と言えば、「蛮幽鬼」では、穏やかな笑顔を絶やさずに人を殺しまくるサジ(堺雅人)も、

舞うように殺す刀衣(早乙女太一)も狼蘭族という設定でしたっけ。

あのサジが今はあのコミーだよ。役者さんって本当にすごいですね。






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