せらび
c'est la vie
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みぃ


2006年06月02日(金) 湖畔へ小旅行・その一

先日の日記にも書いたように、うちの界隈では先週末は所謂「墓参り連休」となっていたので、ワタシは友人に誘われてある田舎町まで小旅行に出掛けて来た。

え?

仕事もしないで、ここのところ「小旅行」が多いのでは?

実はワタシもそう思った。

それはまあ、置いておいて。

事前に友人から聞いていた通り、そこは自然のど真ん中にある小さな町で、つまりそれ以外には何も無い、のどかな土地であった。

ワタシは元々戸外活動が好きな性質なので特に文句は無かったのだが、一緒に行った友人の「年の離れた従姉」と「そのボオイフレンド」にとっては、相当退屈な旅だったようである。何しろ、最終日には朝からテレビを見始めてしまうくらいの、典型的な都会人たちなのだから。

ところでこの人々については、「もし彼らの口論が始まっても、気にしないで。良くある事だから」と注意を受けていた。

てっきり口喧嘩の多い中年カップルなのだろうと思っていたのだが、それはふたりの間のみならず他者に対しても容赦無く行われるのだという事を、ワタシはいずれ知る事になる。



金曜の夜、友人が運転する車で、我々は北方の小さな湖の畔にある町へ向かう。一部混んでいたので、所要約六時間である。

車に乗り込むなり、ワタシは早速同乗者の皆さんに一通り自己紹介をしてみるのだが、このふたりの中年は碌すっぽ挨拶をしない。いい年をして人見知りも無いだろう。なんとも奇妙な人々だと思う。

それから暫くのうちに、ワタシはこの「従姉のボオイフレンド」という初老の男性の、言葉遣いの酷さに気づく。

このくらいの年代の男性といえば、通常それなりの社会的地位というものがあるので、少なくとも初対面の人に対して、特に女性に対して話をする場合は、多少の気遣いが成されるのが常だが、しかしこの男はお構いなしである。

この人々もワタシの友人同様、街の中心地に程近い「閑静な高級住宅街」地区で暮らしていると聞いていたのだが、そして磨かれた「葡萄酒色のローファー」を履いているのがちらと見えるのだが、その割りにこの粋がった高校生か何かのような汚い口の利き方は何だろう。ワタシは暫し呆然とする。



滞在先である友人のボオイフレンド氏が住む家に着いた頃には、既に日付が変わっていた。

歓迎を受けて、ワタシたちは早速土地の麦酒や葡萄酒を頂く。

この辺りには沢山の葡萄畑や葡萄酒製造工場があるそうで、中でも格別美味いと評判の甘い「ロゼ」を呑む。

(ちなみに「従姉」はこれを、「まだ若くて深みなんか全く無い、ただ甘いだけの色水。グラス一杯が限界。」と後に評する。)

ワタシが手土産に持参したギリシャの臭い酒は、この男性らに意外と好評で、だからこのロゼは単に「来客女性向け」に過ぎないのだ、と知る。

そのうち友人は、運転と日中の仕事の疲れで早々に寝入る事にした模様で、勿論ボオイフレンド氏もそれに続き、「従姉」も疲れたから寝ると言いながら部屋を出たり入ったりと落ち着かず、後は「ローファー」とワタシが残される。

この男は車の中でも引っ切り無しに喋り続けていたが、酒が入った後は加速度付きで、実の無い話を続ける。彼の話は基本的に彼方此方へとっ散らかっているので、要領を得ない。また冗談も良く飛ばすのだが、寧ろ彼の話はそもそも全てが冗談を言う為に話しているかのように、漸く結論に辿り着いたかと思う頃に必ず奇妙な冗談が登場するので、一体何の話だったのやらと戸惑う。

かくして初日の晩に、ワタシは「ローファー」の話は概ね聞くに値せず、聞き逃しても惜しくない、と判断する。



翌朝、友人とボオイフレンド氏が起き出して来た音を聞いて、ワタシも起きる事にする。

というのは、沢山あった筈の寝室は何故か満室で、「独り者」のワタシは居間の隅に囲いをした一角に簡易寝床を作って貰い、そこで寝泊りする事になっていたからである。お陰で、すぐ脇の台所や食卓に人が出入りする度に、一々起こされる羽目になっていたのである。

この家に滞在している間、ボオイフレンド氏が毎朝珈琲を淹れてくれたのだが、これは掛け値無しに旨かった。


この日は例の「スクーナー」と呼ばれる大きな帆船のクルーズに行く事になっていたのだが、出掛ける前にボオイフレンド氏が「海苔入りオムレツ」なる彼の発明品を朝食に作ってくれる事になる。

友人曰く、それは給料日前で金も無ければ冷蔵庫に食材も無い日に彼女の部屋に遊びに来ていた彼が、魔法の如く余り物を寄せ集めて拵えた「成功作品」だそうである。技術と創造力のある男性とは、素晴らしい。

そのうち「従姉」も「ローファー」も起きて来たので、ワタシは空いたシャワーを使う事にする。

身支度を整えて出て来ても、「海苔入りオムレツ」はまだ完成していない模様である。料理が得意という「従姉」が、友人とボオイフレンド氏の共同作業に参加(若しくは横から要らぬ手出しを)して、ばたばたとやっている。

ワタシは朝靄の中デッキに出て、湖へ向かってなだらかな斜面になっている広大な裏庭の眺めを楽しむ。その余りの広さに圧倒されながら、そういえば夕べ此処へ来る途中、町を走る一本道を折れてからはずっと「未舗装道」だったのだ、という事実を思い出す。何だか新鮮な心持である。

漸く出来上がった「海苔入りオムレツ」は、大変辛かった。

最初に説明を受けた段では、ボオイフレンド氏は「海苔とチーズが入ったオムレツ」を作ると言っていた筈なのだが、いつの間にか計画は変更され、玉葱や椎茸やピーマンなどをトマト色に炒めたものが一緒に入っており、更に大量の赤唐辛子が投入されている模様である。お陰で海苔の風味は完全に損なわれていて、残念である。



その日は生憎、靄の掛かった薄曇の日和で、大変肌寒かった。

ワタシは半袖に薄手の長袖ジャケツを二枚、下は七分丈のヨガ用のおズボンにウールの長靴下とスニーカー、そして雨具上下とスカーフを持参するが、これに手袋とウールの帽子を持っていけば万全だったなと思う。


この船は以前売りに出されていたのだが、長らく売れなかった。というか、持ち主である「葡萄酒製造業主」氏は、本当のところ「彼女」を売りたくなかったようである。当然売りにも身が入らなかったのだが、そのうちどうにか買い手が付く。

ところが、それは先だってうちの界隈まで最後の航海にやって来た後、近海で難破してしまったそうである。

ある日彼女は、四本あるマストが全て折れた無残な姿で停留というか放置されているところを発見される。数日掛かってやっと故郷の湖の町まで辿り着き、そこで修理される予定だったのだが、余りにも壊れ過ぎていたので、一部の木材を再利用して一から作り直される事になる。

だからその船は、以前見た時と少し様子が違っていた。

それはワタシのおセンチの所為などではなく、実際使われた木材や塗料の色艶が、全く別物だからである。更にはどうやら金銭絡みの問題もあった模様で、だから船大工も今回は気合を入れて作らなかったらしい、という事が出来映えを見ても明らかである。飴色の美しい船だったのに、寂しい事である。


霧の中に佇む帆船を見ながら、ワタシは夕べ酒の肴に聞いたそんな話をぼんやりと思い出す。

今ではこの船は、湖観覧クルーズ用のチャーター船として、「乗船料」を徴収して運航している。それには「葡萄酒製造業主」氏の工場で造られた数種類の葡萄酒の試飲とチーズやクラッカーなどのツマミ代も含まれているので、一寸高い気もしたが、しかし実際この巨体を操縦する若者たちの仕事振りを見ていると、これは相応のチップを弾んでやらなければ嘘だと思う。

この船をうちの界隈まで運んで来る際のクルーでもあったボオイフレンド氏によると、ここで人々から支払われるチップの多くは、船長氏がどうやら「ピンはね」しているらしかった。つまりそれは、実際船を動かす為に必要な仕事の殆どをこなしている数人の若者たちの手には、大して渡っていないという事である。

この「船長氏」にはワタシも以前会った事があるが、年配なのでてっきり既婚者だと思い込んでいたら、どうやら独身で、しかもいい年をして親と一緒に暮らしているとの事なので、驚いた。普段は近隣の大学で写真技術を教えているらしいのだが、にも拘らず若いクルーたちにチップを回してやらないのは、どうにもがつがつしていて頂けない、という話である。

友人は、彼は女々しいから女が寄って来ないのだ、と言う。それを聞きながらワタシは、案外人は見掛けに寄らないものだな、と感心する。


そんな事を思いながらも、ワタシはその帆船が実際動いているところを初めて見る事が出来、またそれに乗って湖内だが一応航海する事が出来たので、大変心地良く過ごしていたのだが、その頃友人がどうやら酔っ払い始めていた。

「葡萄酒なら色々出るが、それ以外に飲みたい場合は持参せよ」との事なので、ワタシたち一行は麦酒を沢山持ち込む。

ワタシは前夜の酒が少し残っているのと湖畔が大変寒いのとで、冷えた麦酒は一本程度に留めて、後は葡萄酒の試飲を小さなカップでちびりちびりとやっていたのだが、恐らくそれ以上に呑んだと思われる友人が突如奇声を発したりなどし始めたので、ワタシは少し心配になる。

他にも乗船している家族連れのお客が何組かいて、その御父兄の皆さんの視線が少し痛いが、友人はお構い無しに浮かれているので、苦笑する。


二時間程の航海を終えて、ワタシたちは地元の人々が集まるというバアへ向かう。

集まると言っても、要するにその町は湖をぐるりとする郡道だか町道だかの一本道に沿ってレストランがひとつ、バアがひとつ、ガソリンスタンドとコンビニエンスストアーとサンドウィッチ屋が合体したものがひとつ、後は見渡す限り斜面畑、という構成である。商店街などのような建物が集合した場所は、見当たらない。

だから必然的に、人々は事ある毎にそのバアに集まって来るのである。他に娯楽がない田舎町だから、仕事が終わったら、後は呑むしかない。単純明快である。

そのバアの主は、オーバーオールから大きなお腹を突き出して、裏庭で揺り椅子に腰掛け人々と歓談しながら呑んでいる、赤ら顔の、穏やかで陽気な小父さんである。彼は勿論、葡萄畑と葡萄酒製造工場も所有していて、そこで出された赤い葡萄酒は、大変まろやかで美味かった。

ワタシはボオイフレンド氏がどのように支払いをしているのか、とバアテンダーに尋ねたのだが、バアテンダー氏が「気にするな」と繰り返すので、何やら解せないながらも、とりあえずチップを幾らか弾むと、以降は遠慮無くタダ酒を頂く事にする。バアテンダー氏は日本語が少し出来ると言うが、どうせいつものオハヨウとサヨナラとカミカゼだろうと、適当に済ませておく。

そこには、老若男女、沢山の人々が集っていた。何人かは紹介を受けたけれども、そのうちパーティーの常で、見知らぬ人々とも交じり合いながら楽しく酒を酌み交わし、歓談する。こんなガイジンのワタシを皆構ってくれるので、ワタシも気分良く交じる。

そのうち、そこんちの茶色いラブラドールリトリバーの夫婦を発見し、特に殊更友好的なメス犬とは、バアの裏に広がるトウモロコシ畑に向かって玩具を投げて走り回ったりなどして、ワタシは相当に楽しく過ごす。


お陰ですっかり気づかなかったのだが、その頃友人は相当に酔っ払っていたらしい。

記憶を辿れば、そのバアに着いて間も無くの頃には、まだ一緒に赤い葡萄酒を呑んでいた筈である。そのうち裏庭にある揺り椅子のひとつに腰掛けてボオイフレンド氏と甘く話し始めたから、ワタシはふたりを放って他の人々とお喋りをしに席を外したのだが、その後彼女はひとりうたた寝をしていたと思う。

ボオイフレンド氏が声を掛けたら一旦起きたのだが、それから「従姉」と一緒に席を立って、裏庭から表の駐車場へ出る小道の途中で、突然ばたと倒れたのがワタシの視界に入る。

ワタシはグラスを置いてすっ飛んで行く。ボオイフレンド氏の名を呼ぶと、彼もすっ飛んで来る。吐く、と言うので、長身の彼は小柄な彼女をひょいと肩に抱えて、トイレへ向かう。

ワタシと「従姉」とで彼女を抱えて便器を抱かせるのだが、彼女は既に意識が無い。ワタシは腕に巻いていた、ヘアゴムに「魔除け」のビーズを通して「腕輪」にしたもので、彼女の長い髪を束ねてやる。

意識のある三者間で、これは家へ連れ帰って寝かせた方が良かろう、という話になり、再びワタシと「従姉」とで彼女を抱き起こそうとするのだが、その際「従姉」に「いいからさっさとどけ!彼女を放っておいてくれ!」と何度も怒鳴られて、ワタシは少し気分を害す。

恐らく「従姉」は身内として心配して、責任を持って彼女の面倒を見る気でいるのだろう、と思い直し、後をふたりに任せてワタシは再び人々の輪に戻って、呑み直す。


暫くして家に戻ると、友人は奥でぐったりと横になっている。

水でも飲むか、それとも「アルカセルツァー」を飲むか、と聞くと眉を顰めて頷くので、それらを持って行ってやる。序でに吐いた物の処理をして、タオルを濡らしたのを持って行ってやる。


台所に戻ると、「従姉」がボオイフレンド氏を怒鳴りつけているのに遭遇する。

なぜ自分をひとり置き去りにしたのだ!あんな「ゲロゲロ嬢ちゃん」の世話を押し付けて、ひとりっきりでこんな何も無いところに放置するなんて、酷い事を!しかも一向に帰って来ないし、全くなんて事をするのだ!


ワタシはこの女は本当に身内なのだろうかと、耳を疑う。酔っ払いの面倒を見るのが嫌なら、ワタシに怒鳴り散らしたりなどせずに任せておいてくれれば良かったのに。得意なのよ、そういうの。

ボオイフレンド氏も、ああそれは悪かったが、しかし君は彼女の世話をしたそうだったし、「夕食にパスタを作る」とも言っていたから、ここに置いて行くのが妥当だと思ったのだが、そうされたくなかったとは知らなかった、と言っている。


ちなみにそのパスタは、正確には「朝食べたオムレツの卵と海苔を抜いてパスタを足したもの」だった。

つまり、同じ材料、同じ色、同じ味の、どこをどうやったら「料理が得意な人の作」になるのか頭を捻りたくなるくらい、不思議なものであった。

そしてそれは、またしても相当に辛かった。

どうやらこの女は、全ての食べ物を辛くしないといられないらしい。



夕食の間も、彼女は何かしらボオイフレンド氏に突っかかっては怒鳴りつけている。

そのうち彼女はワタシを捕まえて、色々と個人的な質問をする。

それは例えば、お前はいつ日本に帰るのかとか日本は好きかとかいうようなのに始まって、ニホンジンは素晴らしいとかいうような、取って付けたような酔っ払いの戯言である。

友人と「従姉」は「中国系移民」なので、ワタシは少し気を使う。日本にいる家族と特別親しい関係ではないので、日本に対する愛着はそれほど無いし、ましてやご先祖さんたちが他所の人々に対して過去に遣らかした事などを鑑みれば、ニホンジンである事をそれほど誇りには思っていない、などというような事を言う。

すると彼女は、お前は「ジャップ」なのだから、それは変えようの無い事実であり、誇りに思うべきだ!「ジャップ」のどこが悪いのだ!と怒鳴り始める。


言うまでも無く、この「ジャップ」というのはあからさまな差別用語であり、ちなみにワタシはこの国に暮らして長らく経つけれども、それを面と向かって人から言われたのは、これが初めてである。

免疫が無い所為かも知れないが、連呼されると、意外と腹が立つものである。


あの、その表現は止めて貰えませんか。貴方がそういうつもりで無くても聞こえは悪いですし、そもそもこの場では不必要だと思います。

しかし彼女は続ける。

「ジャップ」を「ジャップ」と呼んで何が悪い!自分も中国人だからと「チンク」と呼ばれる事もあろうが、それで特に気分を害したりなどしない。「中国人」を「チンク」と呼び、「黒人」を「ニガー」と呼ぶように、「日本人」を「ジャップ」と呼んで、何が悪いのだ!


(ちなみに「チンク」も「ニガー」も同様に差別用語なので、もし撃たれたくなければ、皆さんも使わない方が良いと思います。)


ショックだった。

だって、この国は移民で出来ているのである。田舎町へ行くと、無教養な人々が異人種に対して露骨な嫌悪感を顕わにするというような事がしばしば起こるが、しかし概ね人々は異人種間では問題を起こさないよう、思っても口に出さないよう、割合気をつけて暮らしている。

それが友人の友人、というような間柄なら、友情に配慮して尚更気を使うものである。

そういう移民の国の中で最も移民が多く、また最もリベラルな大都会として名高い街、そこで生まれ育った筈の彼女。それがこの程度の無教養振りである。

ワタシはあの街の人々の事をすこし買い被っていた様だ、と思い知る。結局は皆「田舎臭い人々」なのだ。


流石にボオイフレンド氏も「ローファー」も助け舟を出してくれるのだが、ひとたび火が点くと「従姉」を止める手立ては無いらしい。暫く怒鳴り合いが続いた後、ワタシは諦めて居間に退避する。

そのうち「従姉」は、居間に乱入してくる。酔っ払った彼女はワタシの手を取り、さあこの音楽でダンスをしよう、と言う。

嫌です。触らないで頂戴。離して。

勿論、「天下御免ババア」がそんなのを聞く筈も無く、彼女はワタシを方々に振り回し、そのうちワタシの口元に頭突きを喰らわす。ワタシはまんまと上唇を切ってしまう。

痛い!

どうした。アンタ一体何したの?

「酔っ払いババア」は勿論自分のした事すら気付いていないので、ワタシは、兎に角離して、もう放っておいて頂戴!と言い放って、部屋を出る。



そこの家には、黒いラブラドールリトリバーのメス犬がいた。

大変友好的なイヌで、朝ワタシたちが出掛ける頃にも、愛嬌を振りまいていた。


普段は地下に住んでいるイヌを、ふと呼んでみる。

彼女はすぐさま駆け上がって来て、大興奮である。

ワタシは彼女の身体を撫でながら、一頻りめそめそする。彼女がワタシの手足を舐めて愛情を示す間、ワタシは口の中と心に出来た傷を舐めながら、こんな事ならもうおうちに帰りたいや、と呟く。


暫くして、友人が起き出して来る。台所で人々と語らっている。薬が効いてきたらしい。

そのうちボオイフレンド氏が、彼女の髪にへばりついている「ヘアゴム」を見つけて、なんじゃこりゃと言う。

台所を見渡せる玄関先に座り込んでイヌを撫でながら、それはワタシの、と言う。彼女が髪に吐かないように、縛ったの。

この丸いビーズは何?

アフリカの魔除け。悪魔が寄り付かないように。

ふーん。



次回へつづく。


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