せらび
c'est la vie
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みぃ


2005年09月05日(月) ハリケーン・カトリーナ

そういう訳で連休なので、今日は月曜だがお休み。

休みなのだが、ワタシの所属団体では、メールを通じた活発な議論が進行中である。昨日も書いた例の大型台風被災関連で、被害拡大の根本要因や今後の政治的変動などについて、同僚らがあれやこれやと道筋を探っているという訳である。

やはり先ず問われなければならないのは、「連邦制度(Federalism)」というこの国の政治体系の「不機能」という事態だろうと思う。

ネットを見ていると、この辺りのシステムを誤解した人々が、連邦政府と州・市(郡)政府の役目を混同して一律にブッシュ大統領批判をしているようである。しかしこの連邦制度下での「分権」という重要事項を加味すると、市当局と連邦政府双方に非が認められる。

昨日の日記にも一寸書いたけれど、更に情報が入って来たので、少し補足を加えるとする。

先ず「ニューオリンズ市」という世界的にも有名な水没の危機にある街にとっては、治水事業と関連した災害対策が最重要課題の筈である。これには誰が何と言おうとも、しっかり金をつぎ込まなければならない筈である。

何しろそれをやらなければ市はいずれ水没してしまうのだから、市民の安全確保の為に、行政はあらゆる手を尽くさねばならないのである。そして、その為の税金徴収である。

亜米利加式民主主義制度(連邦制民主主義)下においては、市予算の使い道は(大統領ではなく)その市議会に決定権限があるので、「予算不足で治水事業に手が回らなかった」という言い訳は、つまり市民の安全対策を怠ったという事で、基本的にその市議会と市議員らに対する批難として反映されなければならない。

しかし今回は規模が規模なので、実際被害が起こった時点で市当局の手には負えないという事が判明した場合、州政府や連邦政府が介入する事になる。今回連邦政府はその介入時期を大幅に見誤ったという「かど」で、現在のところ大いなる批難を浴びせられているという訳である。

例えば大統領・副大統領共に被災直後にもヴァケーションを続行していただとか、国務大臣(外務担当長官)は某フェラガモへ$7,000も掛けたお靴のショッピングに出掛けていただとか、そういう下世話な報道もされているような次第である。

(この辺りは、日本でも例えばつい先日の列車脱線事故の際などのように、同様のマスコミ報道が幾らもあるから、馴染み深いところではある。)

しかし今回の件では、ルイジアナ州の州知事が連邦政府からの指揮権代行の申し出を、それは「戒厳令」と同様の措置であるから、という理由で「拒否」した、という報道もあるので、ワタシは現段階では何とも判断しかねているのだけれども、既に出回っている報道や体験手記などを総合すると、要するに被災直後のニューオリンズ市・ルイジアナ州では連邦政府と市・州政府間において権限執行の加減というか分担に関する衝突・混乱があった為、実際の避難誘導やら救助活動などが大幅に遅れた、というのが大方の見方である。


とは言え、ワタシは更に言うけれども、例えば市の大きな運動施設は大勢の市民の避難場所になった訳だが、その割りに水や食料などのストックは一切無かったとの事であるから、今回の件で市当局が如何に「後手後手」だったかという有様が窺えるではないか。大きな台風が来るぞ来るぞと言っておきながら、市としてその為の準備は一切していないというのは、言語道断である。

また殆どの学校の送迎バス(所謂黄色い「スクールバス」)は水に浸かって無用の長物と化した訳だが、例えばそれらを動員して低所得者や寝たきり老人などの、避難するにもその手段が無かった100,000もの人々を市外の安全(と思われる)場所へ移動させる事だって出来た筈である。

やろうと思ったら事前に出来た事は恐らく他にも沢山あるだろう。これらを危機管理・対策の大いなる欠如と言わずして、何と言う。一般人のワタシですら思いつく事なのだから、市の危機管理対策専門家なら当然やっておいてくれなければ、困るではないか。

それからもうひとつ。昨日も一寸書いたけれども、この国には「連邦緊急管理局(Federal Emergency Management Agency - FEMA) 連邦緊急事態管理庁」という独立した専門機関がある。災害時には出来るだけ早急に必要な人員や物資が召集・配備され、迅速な救助活動を展開する事が求められる訳だが、このFEMAというのはその為の専門機関である。確かその昔、犬と一緒に神戸にも行った筈だから、ニホンジンにとっては馴染み深いかも知れない。

これに加えて、この国には「国家安全省(Department of Homeland Security) 国土安全保障省」と言って、例の同時多発テロ後に設けられた機関がある。こいつは既存の関連機関を統合したものだが、結果はビザ・出入国手続きなどを不必要に難しくしたりその人の人種・宗教・出身国などによっては有無を言わさずしょっ引いたりなどして、外国人に対する謂れの無い人権侵害を合法化したとんでもない機関なのだが、しかしその割りに宣伝した程の目ぼしい効果を挙げていないという正に「税金の無駄遣い」的機関でもある。

これらの連邦機関は一体何処で何をやっていたのか。このふたつは重複する職務が有りそうなのだが、ホームランド・セキュリティがどれ程国内の災害に対応しているのか不明である。しかし主にFEMAが(数日遅れて)どうやら「治安確保」の目的で一部の被災地に投入された以外報道を見ない。

しかも災害時に威力を発揮する州兵(National Guard)のうち三分の二程はイラクに派遣されてしまっていて、土地勘のある有能な兵士たちが不足しているという事態に至っては、いよいよもってして大統領のお粗末な国際政策に再び議論の焦点が戻ってくるという訳である。

(後日補足: FEMAは旧移民局などと共にホームランド・セキュリティ傘下の模様。どのみち機能していない事には違いない。)


兎に角、まぁ「対岸の火事」を眺めている立場のワタシもそうだったのだが、被災直後の三日程の間、政府や関係組織の人々は基本的に「原油価格の上昇」(若しくはフェラガモの靴)に大いなる関心を示しており、一国の主としてのパフォーマンスの必要性は認めるとしても、とりあえずこの災害が亜米利加経済及び世界経済に与える影響は「僅か」である、と実際に視察する前から宣言してしまったところに、ワタシは今回の一件がこの政権にとって国内政治的に相当のダメージを及ぼしたと思う次第である。


尤も実際の経済効果の方はどうかと言うと、今回被災した町はどれもそう大きくないというか、亜米利加経済的に然したる影響を及ぼしそうな程度の規模では無いので、町自体の復興は大変な道のりが待っているけれども、しかしそれによる新たな雇用とか起爆剤的影響を考慮すると、国内経済的にはそれ程問題では無さそうである。

ただ「原油価格」に関しては既に世界的に影響が出ているところだから、その辺りはやはり注目すべき事項である。


ところで一般人であるワタシの目下の注目事項としては、この冬はそういう訳で暖房用のオイルが高いから、そうするとワタシの住処も暫く寒い訳だな、という事である。

・・・ふむ。

近いうち、羽毛の掛け布団を丸洗いしておこうと思う。



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