『ギリシア・ローマの神話』 吉田敦彦 ギリシア神話というと、呉茂一氏の上下2巻のそれが有名である。が、私は別にそう詳しくなろうとも思わず、この1冊本を手にした。これなら挫折せずに読み終えられそう。(神話だの民話だのというものは、いくつも読むと飽きてしまって挫折と相成る。) 手にした理由はもう一つあって、大昔、私の通っていた学校に吉田先生が非常勤で来て下さって、その講義を受けたことがあるからだ。ソフトなお声に加え、人格高潔オーラが教室を満たしていた。なぜそう感じたのか、思えば不思議だが、でもそういう印象だった。(後に直接氏を知る人にそう話したら、事実そういうお人柄らしい。) ともかく、吉田先生のお書きになるものなら、テキトーでいいや、とか面倒クセー、なんていう言葉からは無縁であろうと信じたのである。 予想通り、大変品のいいギリシア神話であった。語り口がとても親しみやすいし、語り手が必要以上に口を挟まないところもよい。西洋のものには、実にあちらこちらにギリシア神話の断片がちりばめてあるのだなあ、と再認識した。 マンガやゲームにもギリシア神話の神々の名をしばしば見かけるが、世間の皆さんはどこまでご存知なんだろう。自慢じゃないが、私はこれを読むまで、ガイアとゼウスの関係だの、クロノスが何だの、というようなことは知らなかった。 ばらばらで名前だけ何となく知っていた神々が、ある程度、頭の中で系図関係におさまった。中学生くらいでこれを読めば、完全に系図が出来るだろう。しかし、私の年になると、読んだだけではとても覚えられない。 だから、こういう本には必ず「索引」をつけていただきたい。人名・地名、それぞれ初出のページだけでいい。残念なことに、この本には索引がない。点睛を欠くとは、こういうことである。それとも、デメテルって何だっけ〜、と思った時に、ちょいと引きたい、というような心積もりなら、別に「ギリシア・ローマ神話辞典」でも買いなさいよ、ということであろうか。
|