書泉シランデの日記

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『イスラーム生誕』
2005年10月17日(月)

あろうことか「数独」にはまって、今日は息子に本を隠されてしまった!
彼にいわせると、「数独なんかやるのは、脳みその消費的な使い方で意味がない」のだそうだ。・・・消費的かなあ・・・私のように数字に弱い人間にはあの程度で十分達成感があるのだけれど。

まあ、それはどうでもよくて、これは内容がとてもよい。
『イスラーム生誕』(井筒俊彦)

本邦イスラーム学の泰斗の手になるこの小冊、さすが大学者の書く啓蒙書は違う。対象への愛情がにじみでている。読んでみて、イスラムについての視座が一つ得られたという感触が残る。

前半は「ムハンマド伝」、つまりマホメットの伝記。とはいえ、彼の生涯がそう明らかになっているわけではなく、どちらかというと、マホメットが啓示を受ける頃のアラブの状況に重きが置かれる。マホメットはその中で生きた男なのである。確かに、状況を知らずして、マホメットがいついつ何をした、ばかり知ってもそれは空しい知識でしかない。

ベドウィンの詩歌が随所で紹介されている。それがなかなかカッコいい。オマー・シャリフでも駱駝にのせて、走らせてやりたい。(なんでここでハリウッド映画になるんだ?)

イスラム教の始まりは日本で言えば奈良時代以前のことだが、そう思うと、アラビア半島って開けていたんだわね。万葉集で威張っていてはいけませんねえ。

さて、この前半を読んで、後半の「イスラームとは何か」を読むと、とてもわかりやすい。こちらは学問的な試み―意味文節理論による解説―らしいが、私にはそれについて批評を加える能力はまるでない。ただ、引用されるコーランの字句の向こうに垣間見える情景とでもいうべきものはとてもよく感じられた。

イスラム教を、暴力肯定的で狂信的なテロリストの宗教であるかのように、こちら側の世界の都合でだけ捉えるのは、やはり間違いというものだろう。もちろんこの一冊だけで、イスラム教がわかった、ということは決してありえない。これからもっとわかるために、初心者必読の一冊である。




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