今日は序曲から気持ちよく耳に入った。小泉ポチのように、聞いただけで涙が出るというほど、こちとらめでたくはない。招待券で来ているポチと違って、必死で自腹切ってますから、元をとるに懸命で泣いてる暇なんかあるもんか。 『タンホイザー』はそもそも、だめ男と世間知らずの生娘の話である。世間知らずの子は不良に惚れるもんだわよ、オシマイ。聞くたびに、ワーグナーって性的欲求の強い人だったんかしらん、と思うだけ。 だから、DVDなどでは、あ〜つまんなかった!ということも往々にしてある。でも、それを見せてしまうのが出来のいい演出×オケ×歌手。今日は本当に面白かった。 ヴェーヌスはマイヤー。彼女に迫られたら、私だってヴェーヌスブルクに居座ってしまいそう。マイヤーさん、すごすぎ。あの強靭な横隔膜。彼女がピカイチ。予想されたことですが。 タンホイザーのギャンビル、前にジークムントで聞いたときはそれほど印象的でもなかったのに、今日のタンホイザーはダメ男なりの色気があって良かった。ルネ・コロを思い出させる(といっても、コロのタンホイザーは生で聞いたことがない)。 私のお目当て、キーンリサイド、あんまり期待していなかったけれど、おお、十分ワーグナー歌手の声量!「夕星の歌」じーん、です。好きだと言い出せないシャイなお利口さんのヴォルフラム、ぴったりの役どころ。芝居もうまいし、今度の『ドン・ジョヴァンニ』も楽しみだなあ。総じて、今日の人たちは芝居がうまかった。 エリーザベトのピエチェンカ、マイヤーさんと一緒じゃ分が悪い。たぶん実は悪くないんだと思う。でも、あんまり面白みのない役どころなので、特にいうことなし。 ポチが来たから、気合が入ったということはないと思うけれど(思いたくもない)、チケットの値段を忘れる満足感。 同じVIPが来るのなら、ポチよりは皇太子や皇后のほうが花があってよろしい。ポチの場合は各ドアに強面が立ち続けるから、うっとうしい。(皇族でも警護がいるはずですが、あんまり気にならないのよね。)
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