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柳澤吉保と町子さん
あんまり頭が元に戻らないので、柳澤吉保の側室の日記など読んでリハビリに励む。側室の日記といっても、吉保の意を汲んで(あるいは、さらに吉保の手が入って)書かれたもので、『源氏物語』や『栄華物語』風の仕立てであることが知られている。おっとタイトルは『松蔭日記』by 正親町町子 という。
吉保というと、金に汚い側用人というのが通り相場だが、本当にそうだったのだろうか、という気になる。確かに吉保が実権を握っていた時代に、幕府財政を破綻に追い込むほどの大赤字が生まれたのだけれど、『松蔭日記』からうかがえる吉保は、もうもう、ひたすら心配りの人。将軍御成り、鶴姫御成り、という際の贈答の品々はうんざりするほど立派で金遣いも荒らそうであるが、それにしても気働きナンバー・ワン。儒学はもちろん禅学にも和歌にも勉強熱心だし、綱吉の好みにあわせるために、本当に熱心。これを将軍の機嫌とり、と表層的なレベルで判断するか、もっと深く、それこそが忠臣の道と励む表れ、ととるか―私は後者だな。お寺や神社の保護保全にも熱心よ。
とにかくあんまり悪い奴という気がしない。町子さんは公家の娘と標榜していて、それは嘘ではないものの、ママは実は妓女だから正親町家の系図には出ていない娘さん。本当はそれゆえの屈折した心理が日記ににじみ出ていれば面白いのに、さすがは才女、なかなか尻尾を出さない。吉保が綱吉第一で仰ぎみているように、町子さんは吉保第一のポジションを崩さない。町子さんの役回りは京都とのパイプである。私は読みながら「あんた血筋が悪いから江戸くんだりへ流されとるんやんか、なにさ、いい子ぶって」と思うのである。『蜻蛉日記』の道綱母さんは正直者で面白いのにね。
あ、そうそう、吉保さん、身内の利便を計りすぎ かもね。産めよ増やせよ、もそうだけれど、養女ってのもずいぶんあって、権力保持に姻戚関係を利用している印象は否めません。
これで頭のリハビリになっとるんかいな?
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