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『問題な日本語』
2005年02月17日(木)

『問題な日本語』 北原保雄 編

駅で電車を待つ間に買った。ベストセラーといわれるものは原則的に立ち読みで済ますのだが、これはネタにできるかな、と下心もあって、800円也を支払う。

著者は国語学者だし、大修館はなんていっても大漢和辞典の伝統を看板にした語学系のところだから、そんなキワモノではあるまいと思ったが、その通りである。この手の日本語本にしては上々

ただしタイトルはキワモノだ・・・「問題」ってまだナ形容詞=形容動詞とは認められないでしょうに。本来<名詞ノ名詞>が文法的に正しいのだけれど、さりとて<問題日本語>というと、少し意味が変わってくる。この本のタイトルでは<問題のある日本語>を<問題日本語>としているわけだ。最近ときどき見かけるこの用法、修飾される名詞の性質に関わる名詞をナ形容詞化して用いている印象を受けるのだけれど、どうだろうか?)

「知らなそうだ」か「知らなそうだ」か、「情けなそうだ」か「情けなそうだ」か、「こちら〜になります」(@ファミレスで聞くね)「(ご注文のほう)これでよろしかったでしょうか」(同前)なんていう表現の数々が、文法的に分析・解説される。大野晋の『日本語練習帳』などでは歴史的用例からの説明が多かったような記憶があるが、こちらは現代の用例が主体で、言葉の意味や用法を知るのに国語辞典を使うという、ごく当たり前の手続きを教えてくれるのでなかなかよろしいと思う。正しい日本語だ、なんだとやかましい人は案外辞書を丁寧にひかないで自分の語感だけで物を言っていることが多い。大修館が『明鏡国語辞典』(「明解」は三省堂)を売ろうとしている下心も感じられるが、辞書を引くことはともかくも大事なことです。(わからない字だけじゃなくて、用例を見るんですよ!)

『明鏡国語辞典』も面白そうなので、今度買ってみようっと←まんまとのせられている

さて、さきほど『サンケイリビング』を読んでいたら、古い家電製品を使い続けるのと、新しいエコ家電に買い換えるのとどちらがよりエコロジカルか、という記事の中に「(古いのがまだ)故障していないのであれば、使ってあげるほうがいい」と出ていた。冷蔵庫や洗濯機を擬人化して、しかも「あげる」のだから、私たち、まったくモノに支配されていやしないか?先日の「つけてあげてください」にも参ったけれど、今日も今日とて考えさせられた。なお、「つけてあげてください」は自分から自分への恩恵の移動ととらえたが、化粧品を擬人化しているという捉え方も可能か?なんだかままごとみたいな世界が展開しているねえ・・・新おんな言葉という範疇化も出来るだろうか?そのためには男相手の表現に「あげる」がどう出てくるかを調べないといけないけれど。

大修館書店
★★★




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