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『マタンゴ』
私は映画をあまり見ない。去年は3月くらいまでに3本も映画を見て、この先どうなることかと思ったが、結局その後は1本も見なかった。今年は1本も見ていない。そんな私が今までに見た一番怖い映画といえば、63年の東宝映画『マタンゴ』である。『ゴジラ』だ、『モスラ』だというお子様映画とは違うぞ。人が人を信じられなくなるという本質的な恐怖に迫る・・・少なくとも幼い私は迫られた。一体誰が小学生にこんな映画を見せたのかしら?なにしろ私はこの映画をみて以来、20年以上、ブロッコリーとカリフラワーが食べられなくなったのだからね。
詩人であり映像作家でもあり、おまけに大学の教員までやっている福間健二氏は作中の「極限状況におかれた人間の相互不信のドラマ」を認めつつも「東宝的都会人種の浅薄さにうんざり」と語るが、田舎の子どもであった私には氏の言説の後半は全く意味をなさない。初公開のとき、1949年生まれの氏は中学生、そのときそう思ったのなら、早熟さに感嘆しつつ許すんだけれど、1986年の映画日記(現代詩文庫「福間健二詩集」所収)にそう書いてしまうのは意地悪よ。37歳にもなってインテリがこんなもん、真面目に見るなって!60年代には田舎と都会の格差が今よりもはるかに大きくて、都会的浅薄さは田舎の若者のあこがれでさえあったのではないか?そうじゃなきゃ、石原裕次郎(日活だけどさ)にあんな人気が出るわけないじゃん。
で、その『マタンゴ』が、なんと京橋のフィルムセンターで先月から上映されていることを知った。夫は『マタンゴ』を見ていないので、長年、これに関しては夫婦の齟齬をきたしていたから、是非行くようにと薦めた。福間くんと妻と、どっちのいうことが正しいか、その目で見ておいで、である。(福間氏は夫の連れ。)次回は2月20日夕方5時。私は行かない。怖いから。またブロッコリーが食べられなくなるもの。
ついでにいえば、洋物で怖かったのは『キャリー』。こういったら、うちでホームステイをしたライアンが大笑いした。でも私は怖かった。そういえば『オーメン』も怖かったな。『エイリアン』も怖かった。お金を出してまで怖い思いをしたい人がいるなんて信じられない。ブッシュを世界の盟主にさせちまう現実社会は十分に怖いと思うが。
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