Mako Hakkinenn's Voice
by Mako Hakkinenn



 ジダンとマテラッツィ
2006年07月13日(木)

 FIFAが今日、ドイツW杯決勝でフランス代表主将のジダンがイタリアDFのマテラッツィの挑発に対して頭突きを食らわせて退場となった問題で、20日に開かれる規律委員会にジダンとマテラッツィを呼んで聴取すると発表しました。

 これに先駆けて、ジダンは12日にフランスのテレビ番組に出演し、事件後初めて口を開きました。マテラッツィの言動が母と姉に対する耐え難い侮辱で、許せなかったという気持ちを打ち明け、衆人環視の中での暴力や世界中のサッカーファンの子供たちに対して謝罪しましたが、あのような行為に及んだことに対しては「後悔はしていない。後悔するということは、相手がした挑発(が報復されるべきものではないこと)を認めることになる」と語りました。
 しかし、肝心のマテラッツィが挑発したという言動については「何度も何度も『お前の母親、姉は…』と言われた。許し難い言葉、私の心の非常に奥深いところに触れる言葉、激しい言葉だった。」と語るに留まり、核心については触れようとしませんでした。

 ジダンは、マテラッツィが発した言葉を告発することを望んだわけではありませんでした。それよりも力を込めて話したのは、自分の行為は特に子どもへの影響が大きく謝罪したいということ。しかしそれについて後悔はしていないという内容でした。

 一方、マテラッツィはこのジダンの発言に対し「僕は彼に人種差別的な言葉や、宗教とか政治に関することを言った覚えはない。彼の母親についても何も言っていない。僕は15歳で母を亡くしていて、今でもそのことを口にするのがつらいほどなんだ。」とジダンの主張を否定しました。また「ジダンは僕にとって伝説のヒーローだ。とても尊敬している」と述べ、さらにジダンの最優秀選手賞が取消になる可能性について「賛成できない。ジダンは賞に値するプレーをした。」とも語っていました。




 さて、僕はこれまでF1を初めとした多くの事柄に関する私論は、なるべく明らかな根拠を元に、自分が事実だと思うことを書いてきましたが、これから書くことはあくまでも僕の推測に過ぎません。個人的感情や先入観も踏まえた上で書きますので、予めご了承下さい。

 マテラッツィがジダンの主張する差別発言や侮辱発言をしていないと否定している以上、核心について触れなかったジダンがそのすべてを打ち明けない限り、この問題は進展することなく終わってしまうでしょう。しかしジダンは、テレビやメディアという公の場ではその核心への言及を避けましたが、「もちろん報復行為は罰せられるべきだが、挑発がなければ報復もない。本当に責められるべき人間を罰する必要がある」として、マテラッツィに対しても相応の処分を加えるよう訴えているため、FIFAの聴取会の席では、真実を明らかにする可能性があります。
 ただし、例えジダンがその真相を明らかにしたとしても、マテラッツィが否定している以上双方の主張は食い違うことになり、問題は平行線で、真相究明には相当の時間を要することが予想されます。

 果たしてどちらの言い分が正しくて、どちらが嘘をついているのか……。

 あまり先入観や過去の事例だけでこういったことに対して結論づけるのは良くないと思うのですが、あえて結論づけるとすれば、僕はジダンの主張するように、マテラッツィがジダンに対して差別的、あるいは侮辱的発言をして挑発したと考えます。つまり、マテラッツィが嘘をついていると……。

 確かにジダンは、試合中に自分を見失ってしまうほど頭に血が登ってしまうことがあり、過去にも相手選手に対して頭突きを食らわせたりしたことが何度かありました。
 しかし、一方のマテラッツィはそれにも増して気性が荒く、暴力的な守備で知られており、空中戦で膝を立てたり、危険なタックルを後ろから仕掛けるなど、セリエAでも彼の気性の荒さは有名です。

 2004年2月のインテル対シエナ戦では、シエナDFブルーノ・チリッロに対してベンチから再三に渡って侮辱発言を繰り返し、挙げ句の果てにはそれを抗議するため試合後マテラッツィの元へ出向いたチリッロを殴りつけ、チリッロは血まみれの姿をテレビの前にさらすこととなったのです。
 マテラッツィは他にもこのような暴力行為や侮辱的発言を試合中に何度もおこなっており、そのたびに謝罪をしていますが、結局何も変わらないのが彼の特徴なのです。

 今回のジダンとの一件に関しても、ジダンの主張が、マテラッツィが否定するように本当に事実でないのならば、彼の気性の荒さや性格からして、もっと怒り狂ってもおかしくないでしょう。身に覚えのないことを言われているのですから、マテラッツィが怒って当然です。
 しかしマテラッツィは、その普段の気性の荒さが影を潜めたように、ただ「そんなことは言った覚えがない」と否定するに留まり、なおかつ試合中に頭突きを食らわせて自分を批判しているジダンに対して、憤りどころか逆に敬意の念しか持っていないという白々しいというか何というか、まるでジダンの行為に未だ困惑しているとでも言いたげな、らしからぬ発言……。

 どう考えてもマテラッツィが嘘をついているとしか思えないでしょう。

 ちなみに、マテラッツィが相手の名誉を傷つける発言を行ったことが確認された場合、規律法の条文では最低2試合の出場停止および罰金3300ユーロ(約48万円)が規定されています。さらに人種差別的な発言だった場合は最低で5試合の出場停止と6600ユーロ(約96万円)の罰金となります。

 ジダンが払った代償に比べたら、ずいぶん軽い処罰ですな……。



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