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■ 雨の日はボサノヴァがよく似合う
2005年07月04日(月)
これはいつも僕が言っていることなのですが、この話題、以前にもVoiceで書きましたっけ?最近仕事をしながらキース・ジャレットなんぞをよく聴いていたのですが、今日は雨模様なのでボサノヴァを聴きながら仕事をしています。
ボサノヴァについて簡単に説明いたしますと、ボサノヴァの原型はブラジルのサンバで、ジョアン・ジルベルトと作曲家のアントニオ・カルロス・ジョビンが旗手となって、演奏形態に改革をもたらし、バラード様式に構造的な修正を加え、サンバを一般的に解放したものです。ボサノヴァはいくつかのスタイリッシュな要素にとってかわり、メロディ、和音、リズムなどのダイナミックな統合を試み、ボーカルを目立たないようにしました。 また、伝統的なサンバの2ビートのかわりに、様々に変化するシンコペーションを用い、ドラムを一般化しました。ドラムによるリズムの基礎はアコースティック・ギターの弦がかき鳴らすシンコペーションによってうまく融合されているのです。ボサノヴァは新しい和音のパターンやコード進行を提示し、しばしばジャズで用いられるコードなども使ったりします。メロディラインはしばしばまばらで半音階を多く用い、慣れていない耳には難しく、不協和音に聞こえることもあります。
ボサノヴァの歌詞もまた特徴的で、ボサノヴァ以前のサンバ・カンソンで特徴的であったメロドラマ的な要素や悲劇的な要素を排除し、代わりに中産階級の生活や日常会話に近い形を取り入れたのです。もっとも代表的なボサノヴァといえば、ジョアン・ジルベルトのアルバム『愛、微笑み、そして花』そして、アントニオ・カルロス・ジョビン作曲、ビニシウス・ヂ・モライス作詞の『イパネマの娘』でしょう。これらの控えめな表現の代表的な例は国際的にもよく知られています。またアントニオ・カルロス・ジョビンは、「ボサノヴァの父」として有名です。
そしてボサノヴァの主流は、落ち着いた抑制されたボーカル・パフォーマンスにあります。器楽曲だけによる即興演奏もまたこの流れの中で成長していきました。ジャズに似たこの形態は作曲され、もともとはボーカル曲として作曲されたものから派生していきます。ボサノヴァを聴けば、気だるそうに歌うボーカルが特徴的であることがわかると思います。
さて、ボサノヴァは熱帯の国ブラジルで生まれた音楽ですが、そのシャンソンに似たソフトでメロウな歌い方はフランスの晴れた日の午後、あるいは意外とイタリアの海岸の砂浜などのシチュエーションにもよく似合うと僕は思います。もちろん音楽の印象は人それぞれの感性によって様々ですから、一概に万人に合うかと言われればそれはわかりませんが、少なくとも僕がボサノヴァを聴くと、僕の心の中にはフランスの晴れた日の午後やイタリアの海岸の砂浜などの情景が思い浮かびます。
しかし、僕は意外にもボサノヴァが雨の日にもよく似合うと言うことを、大学時代に発見したのです。当時住んでいた学生マンションの部屋は、窓が磨りガラスでない、大きな透明のガラス窓だったんです。僕の部屋は2階だったのですが、窓の向こうには広大な田園風景が広がっており、そのはるか向こうに河原の土手、さらにその向こうにはPL学園のシンボルであるPL塔がそびえ立っているのが見えました。 そのため雨の日は窓ガラスの向こうに、雨に濡れもやがかかり、墨絵のような灰色の空の下、田圃の鮮やかな稲のグリーンが一層鮮やかに見えるという、とても幻想的な風景が広がっていたのです。その景色をただ眺めながら、窓を打ち付ける雨の音を聞き、そしてボサノヴァの優しいギターシンコペーションに乗せて歌うアンニュイなボーカルを聴くと、何とも言えない清涼感のような感覚を味わうことができたんですよね。
今でも、雨の日になるとボサノヴァを聴きたくなります。きっとボサノヴァの涼しげなサウンドが耳に心地よくて、雨の音にも良くマッチしていて、じめじめとした湿気感から解放してくれるのかもしれません。
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