Mako Hakkinenn's Voice
by Mako Hakkinenn



 どう思う?裁判員制度
2004年05月25日(火)

 少し前の話題になりますが、今月21日、国民に重大な刑事裁判への参加を義務づける裁判員法と、公判前の争点整理などを当事者に義務づける改正刑事訴訟法が、参院本会議で賛成多数で可決され、成立しました。無作為に選ばれた20歳以上の国民が裁判官と話し合いながら、被告の有罪・無罪や量刑を決める新制度が09年をめどにスタートします。

 裁判員法の成立を受け、野沢太三法相は「国民の感覚が裁判に反映され司法への国民の理解が一層深まり、司法がより強固な国民的基盤を得られるようになる」と意義を強調。「大きな仕事ができ、ほっとしている。社会の在り方そのものを変える力を秘めた制度で、参加することが誇りに思えるような機運を作るのが大きな課題だ」と述べました。施行には自民党総務会の了承を取り付けることが条件とされており、今後どこまで国民の理解を得られるかが重要なカギとなります。

 裁判員制度は、政府が進めてきた司法制度改革の最大の柱の一つで、国民の司法参加は昭和18年に陪審制が施行停止して以来。日本の刑事裁判にとり、歴史的な転換点となるといえるでしょう。裁判員は20歳以上の有権者が対象になります。幅広い国民の健全な常識を判決に生かし、司法の信頼回復や裁判の迅速化などを図るのが狙いだそうです。しかし、実際には「国民の理解が十分とはいえない」のが実情で、死刑判決にも関与するなど重い負担への懸念が指摘されているため、今後国民に負担受け入れへの理解が大きな課題となるでしょう。

 裁判員への守秘義務は、現、元職とも課され、評決時の「有罪」「無罪」の数などを漏らせば、6月以下の懲役か50万円以下の罰金、元裁判員が裁判官らとの議論の経過を漏らした場合は罰金だけとしました。

 《裁判員法の骨子》
 一、地裁で審理する殺人などの重大刑事事件が対象
 一、原則は裁判官3人、裁判員6人で有罪・無罪、量刑を判断
 一、裁判員は有権者からくじで選出
 一、病気や介護、思想信条などの理由で辞退可能
 一、職務上知り得た秘密などを漏らせば罰則。

 この裁判員制度は、現在欧米で採用されている陪審員制度と同じものと言えます。個人的な意見を言わせていただくと、僕はこの裁判員制度は反対です。これまで日本の裁判では、日本の法律を学んで来た裁判官が、被害者や加害者に対する個人的感情にとらわれず、法律の観点から双方の言い分を聞き、極めて平等な立場で事件を裁いてきました。しかしながら欧米諸国などで見られる陪審員制度における裁判では、時としてマフィアなどの大きな組織が絡むケースで、陪審員が買収、あるいは脅迫されたりして裁判の平等性を欠く事例が多く存在しています。またアメリカ南部の裁判では、人種差別による陪審員の不平等な剪定なども問題視されたりしています。

 また、すでに欧米諸国で陪審員制度が取り入れられているとはいえ、僕個人的な考えとしては、法律に関してほとんど無知に近い一般市民に量刑の判断をさせると言うことに、抵抗を感じずにはいられません。しかも現代の日本社会には、20歳以上の若者でも新聞やニュースを見ない者が多く、そういう世の中のことを知らない人間が審判員に選ばれたらどういうことになるかというのを想像すると恐ろしくて仕方がないですね。特に毎年の成人式での一部新成人たちのような頭の悪いバカどもが量刑を判断するなんてことになったら……。

 問題はそれだけではありません。くじで決められた裁判員の秘密は果たして本当に厳守されるのかという点です。裁判員の守秘義務だけでなく、誰が裁判員に選出されたのかということに関する秘密に対しても、しっかりとした対応が必要になってくると思われます。特に殺人事件の裁判においては、その量刑を巡って裁判員にも危険が及ぶ可能性は否定できません。裁判員は一般市民なわけですから、判決による関係者の報復や批判に対して、その立場は非常に弱いものであると言えるからです。

 僕に言わせてもらえば、裁判員制度を導入するよりも、もっと法律を学んだ裁判官を多く育成していく方がよっぽどいいような気がします。せめてもの救いは、今のところこの裁判員制度は「地裁」のみで適応されると言うことでしょうかね。


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