HARUKI’s angry diary
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| 2005年01月20日(木) |
クマとの馴れ初め その3 |
クマは再会した当時から、「いずれは離婚する」と言っていた。 HARUKI的には、へーー子供が二人もいてどーするんじゃい!と思っていたのだが、クマは「最悪でも定年退職のときには離婚するんだ」と必死でHARUKIに訴えていた。
で、今この有様かいっ!!と思わず突っ込みを入れたくなるが、それは置いといて。(前フリ終わり)
不倫というのは、本当につらい。相手に対する想いが強くなればなるほどそのつらさは化け物のように、巨大化してくる。
今、こうして亭主と飯を食っているときにクマも妻子と飯食ってるんだよなぁとついつい考えてしまうのだ。 自分だって同じ状況にあるにも関わらず、俄然クマの妻への嫉妬心が沸いてくる。本当に人間というのは自分勝手な生き物だなぁとつくづく思う。
おそらくクマも同じ気持ちだったのだろう、つらさに耐え切れなくて「もう別れよう」と言う言葉が、何度も何度も、それも交互に二人の間に出てくるのだ。 そのたびに、言い出しっぺじゃないほうが「そんなことは言わないで…」と相手をなだめにかかる。 そんな不毛な会話が、何度かわされたことか。
阪神淡路大震災で被害にあわれた方には、大変申し訳ないのだが、二人がヘトヘトになって付き合っているときに震災が起きた。 クマは言った。 「地震でも何でもいいから、妻と子供が一瞬にしてこの世からいなくなってくれたら、どんなに楽だろう」 と。 HARUKIなぞは、完全犯罪で夫を殺す方法はないだろうか?と真剣に考えたりもした。
今考えるとすごく怖い話ではあるが、真剣に不倫をしているとそこまで精神状態が追い込まれていくのだ。
それでも、HARUKIはクマが妻子を捨てるなんてことは考えられなかった。
「なんで奥さんとうまく行かないの?」
何度問いかけたことか。 そのたびに少しずつ聞かされるクマの悲惨な結婚生活は、クマの話を話半分に聞いてもちょっとクビをかしげたくなるものだった。
妻は、本当にクマのことが好きで結婚したんだろうか?
クマは言った。 「結婚前に数回デートしたんだけど」 っていうか、数回しかデートしてないんかい!
「公園や遊園地に行くときに、必ずお弁当を持ってきてくれるんだよ。それがすごく美味しくてさぁ。ところが、いざ結婚生活が始まってみたら、彼女、料理がすごく下手だったんだ。あとでわかったんだけど、デートのときに持ってきてたお弁当ってすべて彼女のお母さんが作ってたんだよね」
「オレを大事にしてくれる、っていう話だったから、結婚にも同意したし、彼女の実家に同居もしたんだけど」 クマの結婚への経緯は、クマが彼女のアプローチに同意して交際が始まったすぐあと、クマの親と妻の親が、速攻で結婚話を進めたらしい。とくにお金持ちでいいお家(←そんなもんあるんかい)のお嬢様だった彼女は、親掛かりの結婚を望んでいたとか。←だったらお見合いしろよっ!
「引っ越して行ったらさぁ、オレの描いた絵は、靴と一緒にすべてゲタ箱に入れられて、油絵の具も汚いから出しちゃいけないって。オレの持って行った荷物を捨てようとするから、実家に戻したりしてさ」 一時が万事こんな調子だったらしい。
とくに夜の生活については、あきれてものも言えなかった。 「オレがその気になっても、まず相手はしてくれない。してくれるのは、妊娠可能な時期だけ。完全にマグロだしね。ひどいときは、布団から手が出てくるんだよ」←おーい! よーするに妻は、クマとの肉体的な接触を極力避けようと努めていたらしい。
HARUKIは言った。 「なんで結婚なんかしたの?」
クマ「HARUKIちゃんと別れて人生投げてたからさ」
でも、クマは二人の子供を作り、父親の務めを果たすべく必死で仕事をした。身体が弱いというふれこみ(笑)の専業主婦の妻のために家事や子育ても手伝っていたのだ。
子供が出来てから、クマは妻の実家の庭に家を建てさせられた。 子供達のために大きな部屋がひとつずつ作られたが、クマのためには廊下のすみの三角形のスペースがあてがわれただけだった。
もちろん、親と別居になったところで妻の態度が変わるわけではない。
こうしてクマは、14年間かけて、どんどん精神状態を悪化させていった。
ストレスから憩室炎になり腸閉塞を起こしかけて、死にぞこなったこともあったというし、さらには、ウツがひどくなり、心療内科にも通っていたという。 そして、職場の女性と浮気までしていたのだ。
絵描きというのは、呼吸をするのと同じように、ごくごく自然に思うがままに絵を描くものだとHARUKIは思う。 これだけゆがめられてしまった精神では、絵なんか描けるわけがない。
もちろんこんな状態だって、クマはクロッキーやデッサンは職場で毎日のようにやっていたらしい。だが、これは作品ではない。 単なる腕の修練でしかないのだ。
HARUKIはクマと会う度に「絵、描かないの?」と言い続けた。 クマは最初のうちは「うーん」と言うばかりだったが、HARUKIとの付き合いが進むにつれて「絵、描けるかも」と言い始めた。
そして、付き合い始めて1年もたった頃だろうか、クマが決意した。 「オレ、絵描きたいから、家を出るよ」
クマが借りたのは、台所とシステムバス付きのボロい8畳間。そこへ、クマは家から徐々に荷物を運び出し、最初のうちこそ寝るのは家に帰るようにしていたが、いつしか、そこで寝泊りするようになった。 妻には「アトリエを借りたから」と話していたらしい。
その部屋は、HARUKIの家からは、自転車で20分くらいのところにあった。 HARUKIは仕事柄時間が不規則なのは当たり前なので、仕事が終わるとクマの待つ部屋に通った。
今思うと当時の夫になんでバレなかったのだろう?と疑問なのだが、彼は自分以外の人間は愛せないヤツなので、HARUKIの行動に対してあまり興味もなかったようだ。 おそらく「仕事が忙しい」というHARUKIの言い訳で、納得していたのだと思う。
部屋を借りてから、最初のうちはそれこそスケッチ程度しかしていなかったクマだったが、徐々にキャンバスに向かう日が多くなっていった。 公園のすぐ近くにある部屋だったので、景色を描いたり、HARUKIにはよくわからなかったが、抽象画を描いたり。
作品が出来るとうれしそうにクマは、HARUKIに絵を見せてくれていた。
つかの間ではあったが平穏な日々が続いていたある日、その後の二人の人生を決定づけるような出来事が起きた。
Mikan HARUKI
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