Rocking, Reading, Screaming Bunny
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Far more shocking than anything I ever knew. How about you?


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*名前のイニシャル2文字=♂、1文字=♀。
*(vo)=ボーカル、(g)=ギター、(b)=ベース、(drs)=ドラム、(key)=キーボード。
*この日記は嘘は書きませんが、書けないことは山ほどあります。
*文中の英文和訳=全てScreaming Bunny訳。(日記タイトルは日記内容に合わせて訳しています)

*皆さま、ワタクシはScreaming Bunnyを廃業します。
 9年続いたサイトの母体は消しました。この日記はサーバーと永久契約しているので残しますが、読むに足らない内容はいくらか削除しました。


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2006年01月20日(金)  You said go slow

昨日出勤前に洗面台の配水管のジョイント部分が外れてしまったので、マンションの管理会社に電話して今日朝9時に水道屋に来てもらった。50代くらいの男性で、一目見て「パッキンが外れている。どこかにありませんか?」と訊く。「・・・さあ」と答える私。記憶にはないが、もし洗面台の下にえたいの知れないゴムの部品が落ちていたのなら、この異常な片付け魔の私のこと、アライグマが食物と見た瞬間に無心に洗ってしまうように、いらないモノと見るや引っつかんで捨ててしまったに違いない。
男性はすぐに手持ちのパッキンを出して、ものの数十秒で修理を済ませたのだが。
修理しながら、低い声でこう言っていた。「こんなことはね、たいしたことじゃないんですよ。水漏れしたからって、どうってことはない。だからね、慌てないでください。呼んでくださればこうやってすぐ来て直すだけです。だから、慌てないでください」
何度も何度も、少し哀しげな響きすらする説得力のある声で、「慌てないでください」と繰り返すのだ。まるでお芝居でも見ているようだった。しまいには呪文を聞いているような気分になった。

どうしてそうまで「慌てないで」と言われたのかはわからない。管理会社が慌てて連絡したのか、或いは私が慌てているとでも言ったのか。
とにかくその時の男性の口調は、「いや、私別に慌てちゃいませんけど?」などと軽く言い返すことなど出来ようもないほどに、感動的なまでの説得力に満ちていた。何だか椎名誠のエッセイでも読んでいるような気分になった。
自分のやるべきことがわかっている職人さんというのは、ただ仕事ぶりを見ているだけでも気持ち良いものだけど。この時の水道屋さんは、それ以上のなんとも言いがたい印象を残した。

私は精神力が弱いうえに、加えて無能力者だ。だから例えば、蛇口をひねればお湯が出るということには毎日感謝している。シャワーを浴びるたびにそう感じている。これは当たり前のことではなくて、ただたまたま物事が全てうまくいっているとうことに過ぎない。
だから、どこかにふと「故障」が生じた時には恐怖を感じる。
昨日排水溝から水が漏れた時、排水溝は洗面台の下の物入れの中を通っているので、物入れの中の物を全部非難させなければならなかった。どうやっても自分で直すのは無理と見きわめ、管理会社に電話した。おかげで英語の授業も少し遅れてしまった。時間がなかったので、電話では早口だったから「慌てている」と思われたのかもしれないが。

水道屋さんがどういうつもりで言ったのかはわからないが。
「こんなことはたいしたことじゃないんです。慌てないでください」というセリフの響きは、ずっと頭の中に残った。
そうかあ。
私はずっと誰かにそういって欲しかったんだな。慌てないで。大丈夫だから。こんなことはたいしたことじゃないんだ。大丈夫だよ。
呼べばすぐ来て直すだけですよ、か。

If you're lost you can look and you will find me (君が自分を見失った時は、見わたせばそこに僕がいるはずだ)
あの日、この水道屋さんを呼べたら良かったな。はは。おかしいけど。
おかしいけど、涙出てくるわ。変なの。
(1/28up)

You said go slow (あなたは、慌てないでって言った)  *Time After Time / Cyndi Lauper (1983) の歌詞。


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