初日 最新 目次 MAIL HOME


ムシトリ日記
加藤夏来
→ご意見・ご指摘等は

2006年07月09日(日)
アラビアン・ナイト*反転伏字多いです。苦手な方はご注意*

「加藤さんは後姿はとってもきれいだねー」
という評価をいただきました。つつしんで後姿美人を追及したいと思います。ポイントはどうやら、背筋と尻です。





というわけで……何がどういうわけか分かりませんが……そのアラビアン・ナイトからの収穫を持って来ようと思います。
思い起こせば中学時代に既に、アホで純真なガキどもはこの原本(文庫)にむちゅうでした。雑誌で「アラビアン・ナイトの文庫本だけはひっきりなしに借りられている」という投稿を見かけたこともあるくらいで、アラビアン・ナイト=エロというのは、実はこれが興味本位に西洋の貴族社会に紹介された当時からのお約束だったみたいです。調子のいい翻訳者になると訳ついでに勝手にエロ場面を増やしたりする始末。

有名な話ですが、アラビアン・ナイトは自分の妃が留守中に乱交パーティを繰り広げているのを見た王様が、”女なんぞ信用できねえ!”というのでヒステリーを起こし、国中の女を殺して回るところから始まります。認知の歪みの典型的なパターンですね。「一般化のしすぎ」です。

いっちゃった王様に教訓的なお話を聞かせて、まともな道に引き戻すのが目的ですから、かの有名なシャーラザード姫が語るのは、アッラーの神がしろしめす法の支配する世界の物語です。の、はずです。実際には王様の興味を引くためという大義名分がありますので、その内容は冒険とお楽しみと恋愛のエンタテイメントに満ち溢れています。だいぶ最初のほうに入っているくだりを引いてみましょうか。



『門番の娘は立ち上がり、するりと衣装を脱ぎ捨てて真っ裸になりました。(中略)やがて水から上がってきて、荷担ぎの膝の上に身を投げかけ、「ねえ可愛いかた、これは何というもの?」といいながら、自分のかくしどころを指しました。荷担ぎが「あなたのラヒムですよ」と答えますと、女は、「あっはっは、あなた恥ずかしくはないの?」といい、男の襟首をつかんでぶちました。それで荷担ぎが、「あなたのファルジュですよ」といいますと、女はなおも打ちかかり、(中略)とうとう男が、「いったいあなた方はなんとよんでいらっしゃるのですかい」とたずねますと、いちばん年かさの女は、「土手のめぼうきって言ってるのに」と答えました』



この場面は似たようなやりとりをつごう三回繰り返します。数えてみたら、女陰を表す単語は八種類、男根を表す単語は四種類出てきました。はい皆さんご注目。この手法、現代のエロビデオにいたるまで連綿と受け継がれています。すぼまりだの薔薇のつぼみだの後ろだのその部分だのアレだのもちろんペニスだのアヌスだの、肝心な部分を表す単語のアイデアが尽きたからといってぼやいていてはあきませんよ。我々のご先祖さま方も、みんな通った道なのです。その昔から、実はみんな苦労しっぱなしなのです。

また別の場面から引きますと、お姫さまの美しさを表現するために七回のお色直し場面を、ドレスの色形にいたるまで毎回描写し、しかも全部に詩をくっつけた上での初夜の場面、というのがあります。



『そして両腕で首を抱き、その両足をわが腰に当てさせると、砲をかまえ、要塞に肉薄するや、城壁を打ち破りました。それで、この娘がまだ孔をうがたぬ真珠、誰も御したことのない馬であることが分かりましたが、かれはその純潔をうばい、かの女の青春の泉を楽しみました。それからひとまずは退いて、軍器をととのえると、さらに攻撃を繰り返すこと前後十五回におよんだので、ついに相手は彼の種を宿しました



……さすがに、書き写していて自分で自分が嫌でした。十五回って言われても、どうコメントすればいいのかよくわかりません。
ついでにこの花婿どの、じゅばんみたいな下着いっちょうで妖怪に誘拐され、往来の真ん中に大の字で寝込みます。



『こうして群集が、かれのことについてなにやかやと取りざたにふけっていたところ、突然にサッと風がバドルッ・ディーンを吹き過ぎ、その肌着の裾をおなかの方まで巻き上げたものですから、その下からまるで水晶細工のような腹部やほぞの凹み、それから腹部や太ももなどがむき出しになりました。群集は「うわーっ、こりゃ素晴らしいなあ」と叫びました』



何を感心してんだか知りませんが足側からのビジュアルを想像して嫌な気分になったのは私だけではないと思います。

そろそろ自分の品性を公開するのはやめときまして、昔話が好きな人間として、確かにこの本は大変面白かったです。注釈一つとっても想像もつかないような習慣のことに触れられていて、エキゾチック趣味をくすぐります。図書館を活用する方法としては、第一のお勧めです。


追記:美人を延々描写する場面で、「眉毛がつながっている」なる表現がありました。アラブの感性がよく分かりません。