何だか、一ヶ月以上もほぼ更新落ち(何だそれ)してると「外に向かって発言する」という行為自体を忘れちゃったような感じがしてイヤンです。
順当に行くと長編の続きをアップしないといけないのですが、すでに現在アップロードされているのと同じくらいの分量があって、『これ全部HTML化するのか……』と思うとそれだけでくらくらしてきます。しかもすぐウェブで読めるようにしてしまっては、せっかく本を買ってくださった皆様に申し訳ないし。
というわけで、次からの更新はちょっと横道にそれるのをお許しください。一息入れて短編を書いたりし、次のパートをどうするか目処が立ってから、淑女シリーズの続きは始めようと思います。
とりあえず本日はオフライン案内です。それと↓。足りない部分がありそうなので、あとで書き足しましょう。
英一朗の尋ね人は探すまでもなかった。一応身の置き所に配慮したらしき風情で、会場の隅の花瓶の脇で壁に背を預けている。花瓶に溢れるように生けられた温室咲きの花々よりも際立った、危うげな美貌に、英一朗は一秒半足を止めて笑みをひらめかせた。彼の恋人は、未だに時折彼の思考を引き留める。 「玲司」 考え事に耽っていたらしく、びくっと震えながら組んでいた腕を解いた拍子に、下になっていた携帯電話が現れた。開きっぱなしの状態で、自己主張するかのようなアラートランプが光っている。 「どこかに連絡を?」 「いえ、ちょっと友達に電話。……真鍋さんこそ、さっき捕まっていたようですけど、用事は済んだんですか」 「あっちは単に雑談の相手をしてほしかったそうです。どうも他人とは思えないので、興味を持っていた……と」 「ああ……」 二人は共通の認識を持っているもの同士の、短い笑いをかわし合った。その男が会場に現れた瞬間から、誰もが眉をひそめて問いただすほど英一朗と彼は外見が似通っていた。お互い一言も喋らなければ、血縁がないとは信じられないほど面差しは共通していたし、兄弟、それも双子だと言ってもすんなり通っただろう。実際には相手のほうが一段年少で、身長も体型も無視できないほど差があったのだが。 相手の男には連れがいて、念の入ったことにこれは九十九との共通点をたっぷり携えていた。ただし、性別が違ったため、せいぜい互いを思い出させるという程度の印象だったが。 「実はその、捕まってた相手の話を聞いてたんです」 「知ってる人がいましたか」 「ええまあ。男の方は竜王正史。女の方は竜王さくら。夫婦じゃありません、兄妹です。竜王電機の会長の孫どもだそうです」 「彼は、わたしに向かっては役者だと言ってましたが……」 「ええ、今けっこうな勢いで売り出してますね。兄貴の方は孫といってもお妾の息子だそうで、最初から会社の経営にはタッチしてません。妹は本家の一人娘で、これが婿をとって会社を継ぐ予定だったとか」 「……? で、実際にはどう?」 「さくら嬢は高校在学中なんですが、この程学業と婚約をぶった切って腹違いの兄貴のところへ、役者になりたいってんで駆け込んじまったそうです。彼女を家に返すの返さないので竜王家は相当揉めてると」 「それはまた」 英一朗はひとしきり対岸の火事に向かって笑い声をたてると、目の前の秀麗な顔がゴシップを楽しんでいるのとは程遠いのに気づいてそれを納めた。 「で、その話はさっきの死体のどこにつながるんです。正直、今の状況を逸らせるなら何でも聞きたい心境なんですが」 九十九は鋭い表情のまま、親指で会場の隅を指差した。 「さくら嬢と結婚する予定だった竜王電機の取締役は、渋谷正弘って名前だそうです。あの死体、確か渋谷とか言いませんでしたか」
うまむーさんへ> キャストをお貸しいただきまして、大変ありがとうございました! ギャラはうまむーさんの口座に振り込んでおきますので、ご遠慮なく使い込んじゃってください☆
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