ひとりごと
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2日に行った実家の和室の隅で、 重ねられたお盆の下に懐かしいものを見つけた。 クロッカスの刺繍をほどこしたテーブルセンターだ。 これはたしか私が中学生のときに、夏休みの宿題として作ったもの。 もう30年近くたつのに、なくならずにこんなところにあったのか。 「こんなふうにしていてごめんなさいね。持って帰っていいわよ。」と 母に言われ、重いお盆を持ち上げて引っ張り出した。 グラスの輪染みや折り目の染みがあるものの、クロッカスの花はきれいなままだった。
持ち帰って手洗いし、裏からアイロンを丁寧にかけた。 染みは薄くなり、白い生地にクロッカスがふっくらと浮き上がった。 よく見ると、とても拙い刺繍だ。 細長い葉っぱは縦長に斜めに刺していけばいいものを 葉っぱの幅で短くサテンステッチしているのでラインがふぞろいになっている。 でも一生懸命に刺したクロッカスだった。 暑い部屋でカーペットに座り込んで針を持っている自分を思い出すことができる。 布を持つ汗ばんだ手の感覚を覚えている。
それにしても、夏休みの宿題には季節外れのクロッカスだった。 デザインは確か婦人雑誌の付録からとったのだった。 ほかにも花の図案があったのに、あのときはなぜかこれが気に入った。 葉っぱの重なりがむずかしくて、たしか何枚か省いてしまったのだっけ。 花びらのグラデーションの糸替えは楽しかった。 仕上がったときには嬉しかった。 真夏のクロッカス。 なんて真剣に作ったことだったろう。
年の初めに、クロッカスの芽が出始める今この季節に あの頃の一生懸命だった自分に会えた。 新しい気持ちになった。 時間に追われてゆっくりと針を持つこともしない今の自分を省みた。 何かきれいな愛らしいものを作ってみたくなった。
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