ひとりごと
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今月の初め、父が仕事でインドネシアに行くことになった。 「化粧品とかバッグとか、ほしいものがあったら書いておきなさい。」 と言われたのだけれど、特にお化粧品もブランド物もほしいものはない。 「ありがとう。でもそんなこと気にしないで楽しんできてね。 おみやげは何かお茶かお菓子の珍しいものでもあったらよろしくね。」 と送り出した。
そして2週間後、実家の妹と電話で話した。 父は無事に帰国したらしい。 妹たちは、それぞれリクエストしたとおりのお化粧品などをもらって ホクホクだったらしい。
「それでね、おねえちゃまのお土産、すごいよ〜。 お手洗いに行こうとしたら階段のところにいてびっくりしちゃった。 電車じゃ持って帰れないから、今度車で行くときに持っていくね。」とのこと。 え?え?お菓子じゃないの? いる、ってなに? 「よく持って帰ったものだと思うわ〜。すごい包みだったのよ。」と母も言う。 う〜〜ん、一体何なの?
「なんだか父がインドネシアで大きなお土産を買ってきてくれたらしいよ。 どうやら置物らしいの。どうしよう〜?」と夫に話した。 「そうか、どうしようね?(普段使っていない和室の)床の間にでも置く?」と夫。 民芸品の大きな置物、もらっても困るかなぁ。
先週の金曜日、実家に行ったときについにそれを見た。 リビングのまん前、2階に上がる階段のすぐ下に立っていた。 民族衣装を着た木製の猫の女の子がお花を持って首をかしげていたのだった。 かわいい! だけれど大きいし、これをうちに置くのはちょっと…。
そう思いながら眺めていたときだった。 父に声をかけられた。 「どうだ。いい猫だろう。これを見たとき、○子の顔が浮かんだんだ。 花を抱えている姿を見て○子にぴったりだと思ったんだよ。」 父は満足そうににこにこと笑った。 「うん、とってもかわいいね。…でもうちにはちょっと大きすぎるかな?」 と、控えめに言ってみた。 「だ〜いじょうぶだよ。きっと似合う。○子にぴったりだ。」と父は繰り返した。 これはありがたくいただくしかなさそうだった。
そして次の日、お祭りに行く妹と姪に連れられて、猫はうちにやってきた。 「ねえ、どこに置くの?」と姪たちははしゃいでいる。 あぁ、出してみるとやっぱり大きい。 測ってみると、その高さは80cm以上もあるのだった。 靴箱の上に置いてみた。 背が高くてちょっと危なっかしい。 「ママのママのおうちでは階段の下にいたんだよ。」と姪たち。 そうか、階段のところがいいかもしれない。
2階に上がる階段の折れ曲がるところに置いてみた。 高さはぴったり。 猫が手すりの間から玄関を覗き込むような感じになった。 見上げてみたら、しっくりと収まっているのだった。 「かわいい、かわいい!」と姪たちは喜んだ。 夫も「あれ?なかなかいいんじゃない?」と言ってくれた。 猫はお花を抱いてにっこりとほほえんで私たちを見下ろしていた。
まだ慣れていなくて、階段を上ろうとするたびにドキッとする。 でも顔は笑えてきてしまう。 木でできた猫のぬくもりとほほえみとかわいいお花を見ると心がなごむ。 何より、あのときの父の嬉しそうな声がよみがえるのだ。 外国で私を思い出して、大変な思いをしてこの猫を連れ帰った父に感謝する。 この子はきっとずっと私たちを、訪れる人たちを優しく見守ってくれるだろう。
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