ひとりごと
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夫の親知らず 2004年06月18日(金)

夕方、電話が鳴った。
いつもよりずいぶん早い夫からの「帰るコール」だった。
「今、○○。」と、会社のある駅の名を告げたあと、
「歯、抜かれちゃったよ〜。」と、少し困ったような夫の声が続いた。
そうだった。
何日か前から「歯が痛い」と言っていたので、無理やり保険証を持たせて
会社帰りに歯医者に行くことを約束させたのだった。

「歯、抜いたって?そんなに悪かったの?」と聞くと
「うん、オヤシラズやった。」と、なぜか嬉しそうな夫の声。
「あっさり抜かれちゃったよ。ごはん、柔らかいものがいいな。」声が少し弾んでいる。
もともと丈夫で病気知らずの夫は、病人扱いされて嬉しいらしい。
不謹慎!だけれど、なんだかおかしい。

帰ってきた夫は珍しくよくしゃべった。
歯医者さんから受けた注意事項(お酒や入浴は禁止、など)を私に説明して、
抜いたときの様子も話してくれた。
もう何年も前、私が親知らずを抜いたときには、そのたびに熱が出た。
ほっぺたが腫れて、すごい顔になったものだ。
それに比べたら、夫の親知らずは軽く抜けたらしい。
痛みもないらしく、元気によく食べて、いつもの顔でにこにことしゃべった。
「今日はビールはダメか〜。ま、歯を抜いたんやから我慢我慢。」と、まじめな顔でうなずき、
「お風呂にも入れへんし早く寝ようかな。」と、まだ8時になったところなのに、そんなことを言っている。
「そうだ!薬をもらったのを飲まな。」いそいそと水を汲んできた。
気分はすっかり病人モード。

そんなとき、夫の父から電話がかかってきた。
父の日に贈ったプレゼントのお礼だった。
私が受けて少し話したあと、夫に代わった。
「今日、歯ぁ抜いてん。そう、親知らず。」と早速話していた。
しばらく歯の話で盛り上がっていた。
めったに話さない「親」と「親知らず」の話をしているのがおもしろい。

「さて、じゃあ寝よう。」と、電話を切って、夫が言った。
「おやすみなさい。お大事に。」と、私が言うと、
「うん、おやすみ〜。」と夫は頬をさすりながら、2階に上がっていった。
なんだか子どものようだった。
歯を抜いたときくらいだけが病人で、いつも元気でいてくれるのはありがたいと思った。


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