ひとりごと
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初夏の贈り物 2004年05月08日(土)

お昼過ぎ、ゆっくりと食事をすませたころ、
玄関のチャイムが鳴った。
小包だった。

友だちからの思いがけない贈り物!
お日さま色の透き通るように美しい夏蜜柑のマーマレード。
夢見るようにうっとりと光る青や白のシーグラス。
それからかわいいきれいな貝殻たち。

瀬戸内の潮風の香りがする。
波の音が聞こえる。
まぶしい陽射しがここにある。

どうもありがとう。
ひと足早く、ここには夏がやってきたよ。



また会う日まで…

仲よしのお隣さんが、今日、とうとうお引越ししてしまう。
朝早くから、若くて力持ちのお引越し屋さんが
テキパキとお仕事をしている様子がうちからも見えた。
私も朝食のあと、お手伝いに行った。

私ともうひとりの仲よしさんの仕事は「植え込み部隊」。
お庭の花々を鉢あげしたり、整理したりしていく。
持って行けないものは、私たちが引き取る。
空いている鉢に、今まで丹精を込めて育てた植物を植え込んだ。

パンジーやビオラなど、そろそろ花が終わりそうなものは
思い切って抜いて、少しでも多くの鉢に、親しんだ植物を植え込む。
ご家族やお引越し屋さんの邪魔にならないように、
私たちは庭にしゃがみこんで、せっせと寄せ植えを作っていった。
帽子をかぶっていても、強い陽射しを背中に感じる。
夏のような明るいお天気。
お引越し当日が、こんな晴れの日で本当によかった。

「その大きな樽が空いているよね。それはハーブの寄せ植えにしようか?」
「このラベンダー、みんなでおそろいで買ったのだったわね。」
「ミント、ずいぶん増えたのね。」
「あ、このセージ、たしかうちのを挿し芽をしたのだったよね。着いてよかった。」
そうだった。
それぞれの草花のエピソードを私たちは知っている。
レモングラスは、うちでやたらと増えたのを、ご近所さん数件にもらっていただいたのだった。
この子も、お供に連れて行ってもらおう。

「あ、シソ!これもハーブの鉢に植えちゃおう。」
「それから、このワイルドストロベリーも。もう実がなっているわよ。」
「いいわね。素敵な寄せ植えができたね。」
背の高いアリウムの白い花がアクセントになった。
ひと鉢できあがり〜。

ふたりで相談しながら、連れて行ってもらう植物を選んでは丁寧に植え込んだ。
昼までに10個ほどの、かわいい鉢植えができあがった。
その頃おうちの荷物の運び出しも終わり、それぞれの家でランチ休憩。
お隣さんが、部屋に入る前に、先日の送別会とお散歩の写真と、
私が作ったビーズのネックレスを小さな袋に入れて渡した。

家に帰り、涼しい部屋の中で、冷やし中華を作って食べた。
先ほどまでのあわただしさがウソのように静かだった。
緑いっぱいの自分の庭を眺めながらも、なぜか気持ちは落ち着かなかった。
もうすぐお別れのときがやってくる。

ちょっと疲れて、30分ほどソファでうとうととした。
薔薇の香りの風が気持ちよかった。
やがて、またお隣からざわざわと人の声が聞こえてきた。
お別れを惜しむ友だちが集まってきているらしい。
リズちゃんの犬友だちも来ているらしく、何匹かの犬の声もする。
いよいよだ。

お隣さんの門の前からは、大きなコンテナトラックはいなくなり、
かわりにたくさんの友だちが立っていた。
子どもたちは、はしゃいで鬼ごっこをしていた。
私も何度目かに鬼にタッチされて、いつの間にか子どもの仲間に入っていた。
大人たちは、静かににこにこと話していた。
お隣さんは、私があげたばかりのネックレスをつけてくれていた。
青白い天然石と白いクリスタル、銀のチェーンが、VネックのTシャツによく似合っていた。
とても嬉しかった。

なにかいつもと様子が違う、と落ち着かなげにみんなの顔を見上げていたリズちゃんとも
お別れの挨拶をした。
ふわふわの首を抱きしめると、顔をなめてくれた。
「リズ、作ってもらったあのクッキー大好きなんだよ。」と、お嬢ちゃんが言ってくれた。
「よかった。じゃあまた遊びに行くときに作っていくね。」と、私も言った。
「リズちゃん、そのときまで覚えていてくれたらいいなぁ。」
そしてリズちゃんは、そのクッキーにつられて、ケージの中に押し込められ、
一番先に車に乗り込んだ。
そのリズちゃんをはさむように、ふたりのお子さんが後ろの座席に座った。
にこにこと笑いながらピースサインの手を振ってくれた。

「それでは…。お世話になりました。どうもありがとう。
またね。遊びに来てね。」
「うん、うん。すぐに遊びに行くね。またね。元気でね!」
名残惜しいけれど、これでお別れなのだ。
関西の新しいおうちまで長距離ドライブのあと、荷物の運び入れや整理があるので
ここでゆっくりもしていられない。
「みなさん、お世話になりました。お見送りありがとうございました。」
と、ご主人さまが挨拶されて、運転席に座り、エンジンをかけた。
最後にお隣さんが助手席に乗って、大きく窓を開けてにっこりと笑った。
「じゃあね。さようなら〜!」

車はいつもの買い物のときと同じように、あっさりと行ってしまった。
みんな少しずつ涙をこぼした。
「もう会えないわけじゃないんだから。またいつか帰ってくるのだから。」
残された私たちはうつむいたまま小さい声で話した。
がらんとした静かな駐車場と、カーテンのない窓を見上げて、
「それではね。」と、お互いの顔も見ないまま別れた。

夕方が来て夜が来て、ことあるごとに、今頃どこを走っているのだろう、と思った。
お隣さんは、もう新しい家に着いただろうか。
あの鉢植えたちは、新しい家のベランダで夜風に吹かれているのだろうか。
慣れない土地で、あの草花たちが、少しでもお隣さんの心を和ませてくれますように。
新しい土地で、お隣さんが元気で明るく暮らしていかれますように。
関西に行く楽しみが、またひとつ増えた。


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