ひとりごと
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コデマリと出会ったのは高校1年の春。 出席番号が最後の私の席は、窓側の一番後ろだった。 その窓から中庭に植えられたコデマリのひと枝が 私の目の前に差し出されるようにふっさりと入ってきたのだ。
白い小さいまん丸の花びらが5枚集まって小さい花に。 その梅のような形の小さい花がたくさん集まって小さい手毬に。 そのポンポンみたいな手毬が集まってひと枝に。
かわいい。 きれい。 雪柳のように純白ではないけれど、アンティークのように ほんのちょっと生成りがかった白が目に優しい。 金色の細い蕊が美しい。 ふんわりほんのり甘い香りがする。 ポンポンと手の上ではずませてみる。 ひんやりして柔らかい。 ノートのすみに、コデマリの花をスケッチしてみたり、 花びらを集めて筆箱に並べてみたり。 訪れた虫たちも、楽しげで小さくてかわいい。 時々テントウムシが教科書の縁を歩いていたりするのだった。
花が終わるとき、まん丸の小さな花びらが机の上にも制服の袖にも 紙ふぶきのように降りかかった。 私はずっと夢を見ているようだった。 コデマリが咲いている間、私はどれだけの先生の話を聞き逃したことか。 花が散り終わり、初夏が来て、私は我に返った。
こんな夢のような春は1度だけだった。 2年になると、教室は2階に変わり、窓からコデマリの枝が入ってくることはなかった。 それでも休み時間には中庭に下りて、コデマリの茂みの間にしゃがみこんでみるのだった。 大好きな花になっていた。
5年前、この家に住み始めてすぐに、コデマリの苗を買い求めて植えた。 私だけのコデマリだ。 いくら眺めても、いくらぼーっとしていてもいい。
この庭では、チューリップと薔薇の季節をつなぐように咲いてくれる。 チューリップのサテンのようなつややかさや、 薔薇のふんわりした花びらの重なりともよく似合う。 きれいで嬉しくて、やっぱりうっとりと夢を見るように時間を過ごしてしまう。 たくさんの白い手毬の中にうずくまり甘い香りに包まれていると 紺色の制服を着ている私に戻ってしまう。 コデマリも私も、あの頃と変わらない。
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