ひとりごと
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お昼から、友だちとのお花見に出かけるので 早くからバタバタと洗濯や掃除をした。 明け方までの雨もあがって気持ちのいい朝だった。
まぶしい陽射しをさえぎるようにつばの広い帽子をかぶって 2階のベランダで洗濯物を広げていたら、下から私を呼ぶ声がする。 仲よしのお隣さんが、フェンスに傘を干しながら私を見上げていた。
「おはようございます。お久しぶり〜。」 と挨拶をした。 「おはようございます。 ごめんね。こんなところでなんなんだけれど、ちょっといいかしら?」 と、お隣さん。 「うん、大丈夫よ。どうしたの?」 私は手すりから乗り出した。 「あのね、突然なんだけれど、うち、転勤になっちゃったの。」 えっっ!?
「4月1日付けで、夫はもう明日から大阪に行くのよ。」 と、お隣さんは、いつもよりまじめな顔で行った。 「え…と、それは単身ではなくって、ご家族で…?」 私はおそるおそる訪ねた。 「うん、夫の頭には、単身赴任と言う考えはないみたいなの。 でもねぇ、家のこともあるし、犬も飼い始めたばかりだし、子どもも6年生になるし、ねぇ。」 と、お隣さんは困ったように言っていた。 「そうね。リズちゃんを飼える家を探さなくちゃいけないんだものね。」 「そうなのー。どうせこっちでも毎晩帰りが遅いんだから、別に単身でも、って思うんだけれどね。」 と、お隣さん。
お隣さんとは、5年前、同じ頃にここに住み始めて以来、仲よくしていただいていた。 庭仕事をしながらフェンス越しにおしゃべりをしたり、花の苗を交換したり、 一緒に手芸をしたり、お好み焼きパーティーをしたり、買い物に行ったり。 お隣さんが留守のとき、お子さんをうちで預かったこともあった。 私が風邪をひいたときには、買い物をしてきてくれたり、差し入れをくださったりした。 夕方に、ちょっと足りなくなったお味噌や薬味の貸し借りもしたりしていた。 それでいて、あっさりとしていて、とてもいいお付き合いをしていた。 素直でかわいいお子さんたちの成長も楽しみだった。 お隣さんがワンちゃんを飼い始めて、これからもっと楽しくなるはずだった。 いなくなってしまうのは、とても寂しい。
「どちらにしろ、まだ住むところが決まっていないし。まだしばらくいるからね。」 と、お隣さんは明るい声で言った。 「どうなるかわからないけれど、これからもよろしくね。 それでもし、私たちがいなくなって次の人が入ったら、同じように仲よくしてね。」 私を見上げてにっこりして、お隣さんは家に入った。
どうなるんだろう。 あんなに仲のいいご家族なんだもの。 やっぱりみんなで大阪に行かれるんだろうな。 寂しいな…。
こればっかりはどうしようもない。 花咲く春は、新しいスタートの季節。 出会いと別れの季節。 こんなに明るいのに、胸がしんとした。
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