ひとりごと
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アシナガバチのお引越し 2004年03月27日(土)


「シジュウカラが庭の巣箱で巣作りを始めたのよ」と
昨日会った友だちが嬉しそうに言っていた。
シジュウカラたちにも春が訪れたのね。
私もにっこりして、自分の庭の巣箱を思い浮かべ、
そして「あぁ…」とため息をついた。
うちの巣箱には、アシナガバチが住んでいたのだ。

4年前、シジュウカラのために巣箱を作り、フェンスに掛けた。
でも場所が悪かったのか、見向きもされなかった。
去年、見晴らしのいい軒下に掛け直したら、マイホーム見学のシジュウカラが訪れだした。
今度こそ!と思っていたのに、先に住み着いたのはアシナガバチ一家だった。
(そのときのことは、03.9.17.「巣箱は誰のもの?」に)

秋から冬の初めにかけて、アシナガバチたちがせっせと出入りしているのを何度も見た。
たまにシジュウカラが入り込んで、あわてて出てくるのも見かけた。
せっかく来てくれたのに。
もう半分あきらめかけていた。
でも友だちから、そんなニュースを聞くと、うちの巣箱でも、と思ってしまう。
もともとシジュウカラのための巣箱なのだから、
眠っているうちにアシナガバチにはお引越ししてもらおうか。
今だったら、まだ間に合う。
シジュウカラの巣作りにも、アシナガバチの目覚めにも。

夕方、巣箱を軒下からはずし、思い切って屋根を開けることにした。
掃除ができるように、片屋根は木ねじで締めて、開けられるようにしておいたのだ。
テラスの椅子の上に巣箱を置き、ドライバーで1本ずつねじを抜き取った。
ドキドキした。
大きな巣が入っているのかな。
ハチの大群が、わぁ〜っと飛び出して来たらどうしよう?
温和なアシナガバチだけれど、巣を刺激すると人を刺すこともあるらしい。

最後の1本は、屋根と一緒にはずした。
中に黄色と黒のハチが見えた!
「ハチだ!」と、叫んで、私は部屋に飛び込み、ガラス戸をピシャンと閉めた。
いたいた。
やっぱりハチが住んでいた。
あー、びっくりした。
ガラス越しに、そうっと巣箱を見てみたけれど、怒ったハチが襲ってくる様子はなかった。
外に出て、おそるおそる巣箱を覗き込んでみた。
ぼうっとした様子のアシナガバチがたった3匹、巣箱の片隅でのろのろと動いていた。
天井に近いすみっこについた、小さな巣らしきものはからっぽになっていた。

ここで越冬していたらしい。
こんなに暖かくなったけれど、アシナガバチにはまだ冬だったらしい。
せっかく眠っていたところを、いきなり屋根をはずされて寝ぼけているようだ。
私はほっとして、カメラを近づけて、何枚も写真を撮った。
くっきりとした黄色と黒の模様が粋なアシナガバチは、
しばらくもぞもぞと動いたあと、巣箱の片隅に3匹が身を寄せ合って動かなくなった。
まだ眠るつもりらしい。

引越ししてもらうなら今この時期だ。
春になって活発に動くようになったら、巣を刺激するのは危ない。
仲間が増えて、本格的にここで巣作りを始めるかもしれない。
そうなったら、シジュウカラの子育ては無理だ。
あまりにも動きが鈍いので、すぐにでも手でつかんで移動させられそうだったけれど
念のため、夜になって完全に眠るのを待った。

空が真っ暗になった頃、懐中電灯を持ってテラスに出て、巣箱の中を覗いてみた。
光に照らされて、ちょっと触覚を動かしたけれど、ハチは眠っているようだった。
小さく折ったメモ用紙でハチたちをすくうと、素直にしがみついてきた。
その紙ごと、小さな箱の中にハチを入れた。
まったくの無抵抗、あっさりと引越し完了。

さて、この箱をどうしよう。
庭に置いておくと、暖かくなって目覚めたとき、またこの巣箱に入るかもしれない。
空き地や公園だと、子どもたちがいたずらして、刺されてしまうかもしれない。
人が見つけなくて、アシナガバチにも住みやすいところ…。
眠りバチ入りの箱を持ったまま、夜道をうろうろと歩き回った。
しばらく歩いて、神社の裏山を登った。
ここだったら大丈夫。
林の中の大きな木の陰に、ハチの箱をそっと置いた。
ふたを少し開けておくのも忘れなかった。
ハチにとっての本当の春が来るまで、静かなこの林で眠っていてもらおう。

ふと気がつくと、真っ暗な林の中に私はひとりで立っているのだった。
ハチと一緒に来るときには恐くなかったのに、急に闇が恐くなった。
足元にまとわりつく枯れ枝や何かの蔓を振りほどきながら山を駆け下りた。
道路に出てほっとして、山を見上げ、箱の中で眠っていたハチのことを思った。
目覚めたらびっくりするかしら。
勝手に引越しさせちゃってごめんなさいね。。

おぼろにかすむ月と星を見ながら家に帰った。
秋から気になっていた巣箱のことが解決して心が軽かった。
またハチが帰ってきたら、それはそのときのこと。
巣箱をきれいに掃除して、また軒下に掛けて、かわいいシジュウカラ夫婦を待つことにしよう。
この春こそ、あの巣箱から巣立つヒナたちが見られますように。


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