ひとりごと
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| あわてない、あわてない |
2003年12月12日(金) |
今日は朝から忙しかった。 10時までに、ピーちゃんの面会。 11時には、お茶のお稽古へ。 1時過ぎ、軽い昼食をとってあわただしく買い物へ。 降り出した雨の中、住む街の駅まで戻り 3時半には、そのまま歯医者さんへ行った。 1時間ほどの治療のあと、駅前のスーパーで夕食の買い物。 大きく膨らんだ買い物袋を3つぶらさげて外へ出たときには もう真っ暗、雨も本降りになっていた。 急ぎ足で歩きながら、これからの予定を考えた。
これくらいの雨なら帽子をかぶって自転車でさーっと帰ったら大丈夫。 大して濡れないわ。 家に帰ったら、まずはちょっとお茶でも飲んで温まって それから夕食の下ごしらえをして、掃除もして…。
そんなことを思いながら、駅の向こうの自転車置き場へと、 明るい駅前のコンコースを急いでいたときだった。 雨で濡れたタイルの床でブーツのかかとがつるっとすべった。 あっと思ったとき、私の体は宙に浮いて スッテーン! 両手に荷物をぶらさげたまま、お尻で激しく着地! 腰から頭へと痛みが突き抜けて、息が止まりそうになった。 みごとなしりもち。
「大丈夫ですか?」 近くにいた若い女性が駆け寄って声をかけてくれた。 「だ、大丈夫です。すみません。」 と、声を出したものの、痛くて立ち上がれない。 こんなところで恥ずかしい、と思っても濡れたタイルに座り込んだまま動けない。 学生風のグループが私をちらりと見ながら行き過ぎるのが見えた。 何人かの視線を感じるけれど、恥ずかしさと痛さで顔を上げられない。
あぁ、あわてていたら、ろくなことはないわ。 これからもっと忙しくなるのに、腰を打つなんて。 今は寝込んでなんかいられない。 またひどいことになっていなければいいけれど。 そうだ、荷物にこわれ物はなかったかしら。 …今日は卵は買ってない。よかった。でもお豆腐があった。 このまま、いつもの整形外科に行ったほうがいいかしら。 でも保険証がないし。
いろんなことが頭の中を駆けめぐった。 ざわめきは頭の上を通り過ぎていた。 いつまでも、こんなところに座っていられない、と我に返ったとき 「大丈夫ですか?」と温かい腕に助け起こされた。 改札口の隣で年賀はがきを売っていた臨時郵便局の売店の若い男性だった。 「あ、はい。大丈夫です。ありがとうございます。」 立ち上がらされて、隣のフラワーボックスに腰をかけた。
「この床、すべって危ないですよねー。大丈夫ですか?どうしましょうか?」 白いウィンドブレーカーを来た男性が心配そうに言ってくれた。 「ありがとうございます。でもここまで来ちゃったら、 自転車に乗ってぱーっと帰るので大丈夫です。もう少しですから。」と言うと、 「じ、自転車ですか?大丈夫かなぁ。無理しない方がいいですよ。」 と、びっくりしたように言われた。
そうか。自転車は危ないかもしれない。 と言うより、無理かもしれない。 「そうですね、雨も降ってきたし、かわいそうだけれど自転車は置いてタクシーで帰ることにします。」 私が言うと 「そうですよ。自転車はやめたほうがいいですよ。タクシーがいいですよ。」 と、私が転ぶところの一部始終を見ていた男性は大きくうなずいた。 寒い夕方、冷たいタイルの床の上で、暖かい親切な声が嬉しかった。
荷物を持って、やっと立ち上がるとなんとか歩けそうだった。 「どうもありがとうございました。」 と、彼に心からのお礼を言って歩き出した。 「気をつけて。お大事に。」 と、優しい声に送られて、タクシー乗り場へとよろよろと向かった。
荷物も多いし、雨だし、腰も打ってるし、こんなときくらいタクシーを奮発してもいいよね。 自分に言い聞かせて、待っていたタクシーに乗った。 歩いても、座っても、腰は痛かった。 「雨、ひどくなりましたね。天気予報、はずれましたねぇ。」 と、運転手さんが話しかけてきた。 「本当に。自転車で来たのですけれど、乗って帰れなくなりました。」 「そうですねー。寒いしこの雨ですし、自転車は危ないですよ。」 と、運転手さんもうなずいていた。 それに腰も打っているしね、と心の中でこっそりつけ加えた。
家に帰って靴を脱ぎ、荷物を下ろして点検してみた。 この分だときっとお尻には赤ちゃんのようなあざができるだろう。 でも骨は大丈夫みたい。 打ち身だけだ。 湿布でもしていたらすぐによくなるだろう。 ただ足首をひねったらしくて、腫れと痛みが少しあった。 この忙しいのに…と思ったけれど、そんな考えがいけなかったのだ。
忙しい、忙しい、と思ってあわてていると、本当にろくなことはない。 こんなときこそ、心を落ち着けて、ゆっくり考えながら行動していかなければ。 気持ちだけあせっても、仕事が早くできるわけではないのだから。 腰の痛みはこれからの私に対する、ちょっと手厳しい教訓。 気をつけなさいよ、と言う忠告なのだ。
これからクリスマス、そしてお正月がやってくる。 飾りつけ、お料理、お客さま、近所でのパーティー。 忘年会、大掃除、お節作り、年賀状、年始まわり。 ますます忙しくなるけれど、あわてない、あわてない。 急いでも、もともとのんびりな私のことだ。 できることは限られている。 落ち着いて、ひとつずつ、楽しんでやっていきましょう。
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