ひとりごと
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先週やって来た迷いインコのピーちゃん(仮称)は今日も元気だ。 はしごくぐりや天井逆さま走りなどをして無邪気に遊ぶので ブランコを入れてやったら、喜んでくれた。 子どもインコの遊ぶ姿は久しぶりで、とてもかわいくて嬉しい。 高く響く幼い声もほほえましい。 飼い主さんのもとへ返すのが一番幸せ、とわかっていても 今このときが楽しくて、このままうちの子になってもいいのに、 …などと思ってしまうことがあるのだ。 いえいえ、いけない。 ちゃんと飼い主さんを探さなくては。
ピーちゃんがやって来た翌日、友だちが情報をくれた。 タウン誌に、ピーちゃんと似たインコを探している記事が載っていたと言う。 少し離れた街ではあるし、3週間以上がたっているので 可能性は低いかもしれないけれど、もしかしたら、と言うこともある。 何より飼い主さんは、心配して一生懸命探していることだろう。 早く確かめなくてはいけない。 週末から出かけることが多くて、今日やっとこの家に連絡することができた。
電話をすると、私より少し年配くらいの女性の声が出た。 私は名乗り、電話した経緯を告げた。 「もしかしたら、こちらのインコちゃんではないかと思いまして。」 すると「あぁ、うちのインコ、見つかったんです!」と明るい声が返ってきた。 「そうなんですか!おめでとうございます。よかったですね。」 私はいろいろな意味でほっとして言った。
そのインコちゃんは、逃げてから2週間もたって、 家から2km以上離れた場所で保護されたのだそうだ。 「もう、奇跡のようです。寒くなりましたし、2週間もたっていたので諦めていたのです。 連絡をいただいて見に行ったらうちの子でした。夢のようでした。」 とても丁寧にそのときのことを話してくださった。 「疲れたのか緊張していたのか、おしゃべりもしなくなっていたんですよ。 それが迎えに行って帰り道、タクシーの中で『オカアサン』としゃべり出しましてね。」 嬉しそうに静かにおっしゃった。 「本当によかったですね。安心したのでしょうね。おうちに帰りたかったのでしょうね。」 と、私も言いながら、感動してしまった。
そう、インコちゃんはおうちに帰りたかったはずなのだ。 2週間も冒険して、やっと懐かしい顔に会えて嬉しかったのだ。 「はい、そうなのでしょうね。本当によかったです。」 と、その方は笑い、そして続けられた。 「今、インコちゃんを保護していらっしゃるのですよね。 保護したインコを大事にしてくださっているかと思うととても嬉しいです。 ありがとうございます。私からもお礼を言わせてくださいね。」 私はあわててしまった。 「いえ、とんでもない。うちにもインコがいますので、お気持ちはわかりますから。」 と答え、そして恥ずかしくなった。 大事にかわいがっているのは確かだけれど、手放すのもさびしくなってきていたのだから。
「そちらのインコちゃんも早く飼い主さんが見つかりますように、お祈りしています。 ご連絡、どうもありがとうございました。ごめんくださいませ。」 と、明るい声でしめくくり、感じよく電話は切れた。 私も静かに受話器を置いて、ため息をついた。 電話してよかった。 その方のインコが見つかっていたことが嬉しかった。 そして心から反省した。
もっと真剣にピーちゃんの飼い主さんを探さなくてはならない。 飼い主さんは、こんなにも心配して、こんなにも喜ぶのだ。 もし自分だったら、と考えたらよくわかる。 いなくなったら、どんなに悲しくてつらいだろう。 無事に見つかったら、本当に夢のように嬉しいに違いない。 インコも優しい家族のいる住み慣れた家に帰るのが一番幸せに違いないのだ。
パソコンを開き、あらためて「迷子の鳥探しています」掲示板を丁寧にチェックした。 いくつかの掲示板を過去へとさかのぼっていくと、これは、と思われるものがひとつあった。 逃げたのは、もう1ヶ月前になるけれど、住所が近い。 他県だけれど、うちから見たら隣町なのだ。 オスで、「生後4ヶ月」と言う年頃もぴったりだ。 それに何より、体の色や特徴がとても似ている。 黄色い顔にライムグリーンの体のオパーリン、右の喉もとにひとつだけ黒い斑点。 もしかしたら、ピーちゃんは、ラムちゃんかもしれない。
保護した場所と日時と状況、インコの様子を書き、 目印になる喉もとの斑点と、顔がはっきり写っている写真を添付してメールを出した。 飼い主なら、自分の鳥は写真を見たらわかるはずだ。
まだ返事は来ない。 ドキドキしながら返事を待っている。 ピーちゃんがラムちゃんであることを祈っている。 飼い主さんと対面して、嬉しそうなピーちゃんの姿を見たい。
こちらを見つめているピーちゃんに、かご越しに話しかけた。 「ラムちゃん?あなたはラムちゃんなの?」 ピーちゃんは何も言わずに首をかしげているだけだった。
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