index|
back |
next
----------2005年11月07日(月) おそらくは不吉な「.」
昔々鳥取砂丘の占い師が「あんたは耳鼻咽喉系で一生苦しむよ」と言って私に小さな呪いをかけた。占い師が私を呪ったわけなんか知らない。「歌手になれますか?」と無邪気に尋ねた中学生の私が生意気な顔をしていたからかもしれないし、隣にいた母のまるで外人のような鼻梁に圧倒されたからかもしれない。ただ単にラクダに揺られて月の砂漠の夢を見ている観光客たちがいいかげん鬱陶しくなっていただけのことかもしれない。ともあれ彼女の呪いは成就する。
今日、右耳の奥に棲みついている龍はこれまでにない激しい暴れ方をして、完全に聴覚を奪った。おかげで平衡感覚もすっかり失って、まっすぐ歩いているつもりでも自然と身体が左右に傾いていき、狭い家の中で何度も壁やテーブルにぶつかった。
18年前に芽生えた小さな悪意と戦う術が分からない。名前にピリオドを打った彼女はおそらく神様の悪意によってその短すぎる生涯にピリオドを打たれてしまった。自ら名前の最後にピリオドを打つのは何故なのか? 私は「nadja」と打ったあとに「.」を置かなければどうしても落ち着かないのだ。おそらくは不吉な「.」だろうに。
|