index|
back |
next
----------2005年11月01日(火) それでも書かずにいられないなら
はじめてウェブ上に自分の文章を「登録」したときどんな気がしたものか、それはもう4年ほど前のことなのではっきりとは覚えていないのだけれど、とにかく落ち着かなかった。それがどんなふうに表示されるのか、どんな人がどんなふうに読むのか、気になって仕方なくて、底のない世界に向かって身体ごと落っこちていったような、奇妙な浮遊感をその夜の間じゅう感じていた。
そうしていつしかウェブ上に「眠らない文字列」を置き去りにすることにも慣れてしまった。浮遊感は常態化し、言葉の行く末を案じる想像力もあまり遠くまで飛ばなくなった。要するに、あまり、気を遣わなくなった。
誰もが容易に表現を手にしたせいで言葉の箍がはずれた。意味を取ることさえできないようなある種難解な日本語が闊歩し、自己顕示欲と自己愛が手に手をとって行進し、へつらいとおべっかとおためごかしが蔓延した。その不穏なるウェブの網の目に向かって、健全で、小さく、本来誰にも見られないでいいはずの日常が夜ごと暴露されていく。さあ書きなさい、さあ読まれなさい、さあ晒しなさい、と唆す顔の見えない誰かの、あるいはさあ見せつけろ、さあ差異化をはかれ、さあ主張しろと背中を押す自分の声に促されて。
もはやそれはコミュニケーションを失った人間のコンフェッション、司祭もなければ赦しもない、堕落したコンフェッションにすぎない。
それでも今更書かずにいられないというのなら。
今、再度、自分に問う。
読まれることを前提とした文章を書いていますか。それは読まれて恥ずかしくない文章ですか。ハンドルネームの後ろに隠れていつか誰かにばれるんじゃないかと怯えていなければならないような文章ならば、自分が書いた、と胸をはって言えないような文章ならば、即刻すべてを削除しなさい。
|