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----------2005年05月14日(土) 五月の風の中で
海から上がって周りを見渡すとビルの山が聳え立っていた。そして海綿は真っ白い大きな匣に閉じ込められる。熱気を孕み唸る機械の前に座り、悪意に満ちた薄い空気を呼吸する。昨日水分を吸い上げすぎたせいで身体の中には悲しい音楽が溢れている。口を開けばちゃぷん、という音とともに水をこぼしてしまいそうだったから、白い匣をこっそり抜け出して、誰もいない、空き地へ。
オフィス街の真ん中で、皆に忘れられた空き地。そこでは太陽が四つ昇っていてもかまわないし、何本もの飛行機雲が格子模様を空に描いていてもかまわない。橡の木の下には異次元世界への入り口がある、かもしれないのだから。五月の風に吹かれながら海綿はため息をつく。
悪くない。
ちっとも悪くない。
むしろずっといい感じだ。
何度か言い聞かせて、白い匣に、戻る。
「五月の風の中で 最後に歌うラブソングさ」
古い、愛しい歌を口ずさみながら。
ルールその14:野良猫を見かけたらエサをやること。
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